文書管理・記録管理
Vol.18 歴史公文書の収集を推進する取り組み
いまだ余震が続き、原子力発電所の事故についても収束が見えない中で、皆さまも不安な毎日をお過ごしのことと存じます。今回の震災により亡くなられた方々のご冥福を、弊社社員一同心よりお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
先日、日本側では失われていた歴史が、海外の公文書によって明らかになった、という記事が掲載されていました。「戊辰戦争でプロイセンに提携持ちかけ 会津・庄内両藩(2011/2/5 asahi.com)」という記事です。日本ではなくドイツの公文書によって確認できたことは、日本に比べてドイツが歴史公文書をしっかり収集する体制ができていたことを意味しています。今後、公文書管理法の施行により、日本でも歴史公文書が後世に残されるようになることを期待しています。
前回のコラムでは、地方自治体(以下自治体)にとっての「歴史公文書を収集するための重要な取り組み」をご紹介しました。本コラムでは、歴史公文書をさらに幅広く収集するための取り組みを、次に3点ご紹介したいと思います。前回の応用編として、ご覧頂ければ幸いです。
1.評価選別基準の策定とレコードスケジュール
1点目は、評価選別基準の策定とレコードスケジュールの設定です。
評価選別基準とは、その自治体における歴史公文書の条件を明文化したものを指します。自治体によっては、ファイル名の例示により、分かりやすい評価選別基準を策定しているところもあります。また、明文化されていることにより、評価選別できる人材を育成することが可能になります。
埼玉県地域史料保存活用連絡協議会や先進的な自治体では、評価選別基準の一部を公開しています。それらを参考にしつつ、自分たちで選別した歴史公文書を追加していくことが、自らの評価選別基準を作る上で、効率的な取り組みと言えるでしょう。
ある自治体では、保存期間満了の公文書を評価選別していく際、歴史公文書として残すと決めた公文書を行政文書ファイル管理簿に記録しています。それによって、同じ部署から発生する同じ業務に関する歴史公文書を、翌年以降、時間をかけずに評価選別できるようになります。
評価選別基準を職員に公開し、公文書を作成してからできるだけ早いタイミングで保存期間満了後の措置(廃棄か歴史公文書か)を文書作成者にチェックしてもらう仕組みを、レコードスケジュールと言います。レコードスケジュールの考え方は公文書管理法に盛り込まれることになり、中央省庁では一元的文書管理システムにこの項目を追加することを検討しているようです。歴史公文書としてチェックされたもの、または文書作成者が歴史公文書かどうか判断できなかったものについて、一定の年度が経過した公文書は中間書庫に移送され、そこで専門職による評価選別や国立公文書館への移管手続が実施されることになるようです。自治体としても、今後、歴史公文書の評価選別を推進する取り組みとして、レコードスケジュールの導入を検討する必要があると考えます。
2.中間書庫機能
2点目は、中間書庫機能です。
中間書庫機能とは、現用文書の段階で、閲覧頻度が低下した時期(作成から6年後など)に、公文書館もしくはそれに準ずる専門部署が管理する書庫に移送し、時間をかけて質の高い評価選別や整理作業を実施し、公文書館への移管を推進する仕組みのことです。
なぜ、中間書庫機能が歴史公文書の評価選別の推進に重要かというと、歴史公文書の評価選別という専門的な業務を、保存期間満了時の短期間で集中的に実施するのではなく、長い期間を費やして実施することができるようになり、残すべき公文書を選別する業務の品質が向上すると考えられるからです。また、主務課の執務室から将来の歴史公文書候補を早期に引き取ることで、重要な文書の散逸や紛失、誤廃棄を防ぐのに有効であるとも考えられています。
ある自治体では、公文書館の職員が庁舎の現用文書保管庫を管理し、現用文書の貸し出し業務に従事しつつ、長い期間をかけて評価選別作業を実施しています。そこで、将来の歴史公文書候補の目録を作成するなどといった、中間書庫的な機能を保有しているのです。
3.歴史公文書を住民や職員に積極的に利用してもらう取り組み
3点目は、歴史公文書を住民や職員に積極的に利用してもらう取り組みです。
住民が公文書館や博物館に来館された際にしっかりとしたレファレンスを行うことや、職員が歴史公文書を利用したい時にはきちんと閲覧の支援をする、といった取り組みが重要です。レファレンスや企画展示、デジタルアーカイブズの公開などを通じ、住民に満足いただけるサービスを提供していることで、住民の役に立っているという声を庁内に共有することができ、公文書館や博物館の存在意義を理解してもらえます。また、行政利用を積極的に支援することで、主務課との信頼関係を築くことができれば、歴史公文書について相談される機会が増えてくるでしょう。このような取り組みにより、歴史公文書が捨てられずに集まってくる環境が次第にでき上がってきます。歴史公文書を積極的に利用してもらえるように推進していくことが、歴史公文書の収集には重要なのです。
おわりに
以上、歴史公文書の収集を推進する取り組みをご紹介しました。このような取り組みが広がり、収集される歴史公文書の量が増えていき、歴史公文書の適切な保存と利用が実現していくことを期待しています。ぜひ、皆さまの職場でも、一歩ずつ取り組んでいただければと考えています。
これまで3回のコラムを通じて、公文書管理の理想像と事例をご紹介してきました。少しでも参考になりましたら幸いです。ご不明な点などございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
※本コラムの内容は2011年4月現在のものです。
【執筆: 当社 営業本部 池田 竜隆】
内容に関するお問い合わせ
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