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公文書管理法と公文書管理条例

2018.02.02  株式会社ワンビシアーカイブズ

 2017年は、南スーダンPKO派遣日報問題、森友学園問題、加計学園問題と、政府の情報管理のあり方が問題視される事件が相次ぎました。では、なぜこのような問題がクローズアップされるのでしょう?その背景には、「公文書管理法」という法律の存在があります。

1.公文書管理法とは

公文書管理法は、2009年7月に制定、2011年4月に施行された法律で、正式には「公文書等の管理に関する法律」といいます。日本で初めて、国の行政機関等における公文書の管理のあり方について、包括的に定めた基本法です。

 第1条では公文書が、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であり、行政機関等の諸活動について「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」と、公文書を適正に管理することが国民主権の理念を支える基盤であるという、高い理想を掲げています。

 対象は、国の行政機関(府省庁)の「行政文書」と独立行政法人等の「法人文書」、国立公文書館等で保存・公開される「特定歴史公文書等」の3種類です。この法律によって、国レベルの公文書管理が一元的かつ統一的に定められることになりました。

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2.公文書管理法で実現したこと

公文書管理法の意義は、大きく3つの点が挙げられると思います。

1点目 : 統一的な公文書管理のルールを法令で規定

以前の公文書管理は、各機関が独自に定めた「文書管理規則」などによって運用されていました。これでは、文書の分類や重要度、保存期限の設定などが機関ごとにバラバラになってしまうおそれがあります。

法律の制定により、行政機関・独立行政法人等における公文書管理が法律で規定されました。また、各機関の文書管理規則も政令とガイドラインに基づいて統一的に定められることとなりました。

2点目 : 国立公文書館等への移管制度の改善

従来は、保存期限満了後の文書を廃棄するか、国立公文書館等へ移管するかは各機関の判断にゆだねられていたため、歴史的に重要な公文書が、その価値を見出されることなく廃棄されてしまうおそれがありました。

法律により、行政機関等における現用文書の管理と国立公文書館等における非現用文書の管理が同一の法律で規定され、歴史的に重要な公文書を評価・選別し、国立公文書館等で永久に保存・公開する仕組みが確立されました。また、公文書の廃棄に関しても内閣総理大臣の事前同意が必要であることが明記されました。

3点目 : 公文書管理をチェックする仕組みの導入

法律では、各機関の長から内閣総理大臣へ、公文書の管理状況についての定期的な報告を義務付けています。これに基づき、政府全体の公文書管理の状況が毎年取りまとめられ、公表されています。

つまり、公文書の作成・授受、執務室や書庫での整理・保存、国立公文書館等への移管または廃棄、歴史公文書としての保存・利用までの公文書の「ライフサイクル」全体が法律によって規定され、その管理・運用の状況が国民の目にさらされるようになったということです。

 今回問題となった一連の事件は、この公文書管理法の理念・趣旨に沿って公文書が適正に管理されていないのではないか、という疑問が投げかけられたわけです。

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3.地方自治体への影響

 公文書管理法はあくまでも国の機関を対象とした法律です。では次に、地方自治体への影響について述べたいと思います。

 公文書管理法は第34条で、「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない」と、地方自治体に対して公文書を適正に管理する施策をとるよう、努力義務を課しています。この法律の後押しを受けて、(呼称はさまざまですが)「公文書管理条例」を制定する自治体がいくつか出てきています。

 2009年以前に条例を制定していた自治体は3つ(北海道ニセコ町、熊本県宇土市、大阪市)に過ぎませんでしたが、公文書管理法の制定以降、市町村では札幌市、秋田市、埼玉県志木市、相模原市、神奈川県小田原市、長野県小布施町、滋賀県草津市、広島県安芸高田市、高松市、都道府県では東京都、神奈川県、鳥取県、島根県、香川県、熊本県が条例を制定しています(2018年1月現在)。

 最近では、豊洲市場移転をめぐる問題から、東京都が条例を制定したことが記憶に新しいかと思います。公文書管理を組織内の内部規則にとどめず、議会の議決を経た条例として制定し、公文書管理を「視える化」することにより、行政の透明化と住民への説明責任を果たすことがポイントとなります。

4.今後の方向性

 今後は国はもちろんのこと、地方自治体においても公文書を適正に管理し、住民に公開する仕組みが求められていきます。そのためには、まずは条例によって公文書管理を適正化・透明化し、歴史公文書を保存・公開する制度を構築する必要があります。

 国の制度にならえば、歴史公文書を保存・公開する「公文書館」の設置が望ましいわけですが、公文書館の設置状況は都道府県レベルで37、市町村レベルでは35程度に過ぎません(2018年1月現在)。せっかく現用文書の管理が適正化されても、歴史公文書を保存する仕組みがなければ、現在はもちろん、将来に対する説明責任が果たせません。

 歴史公文書の保存・公開が進まない理由は、文書目録が未整備であること、重要な歴史公文書を評価選別するための基準がないこと、の2点が挙げられます。この2つの作業は自治体の限られた職員だけで実施することはなかなか難しいと思われます。そんな際には、外部の専門家へ相談することも視野に入れると良いでしょう。

 重要な公文書の保存・公開を進める専門家を「アーキビスト」と言います。後世に残すべき歴史公文書の評価選別、文書目録の作成、公開基準の策定、永久保存に向けた環境整備など、是非「アーキビスト」にご相談ください。

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