建設請負工事の電子契約が可能に。グレーゾーン解消制度を解説します


目次[非表示]

  1. 1.グレーゾーン解消制度とは
    1. 1.1.建設業界の工事請負契約
    2. 1.2.電子契約がグレーゾーン解消制度で確認されることの意義
  2. 2.WAN-Signの活用範囲
    1. 2.1.見読性の確保について
    2. 2.2.原本性の確保について
  3. 3.電子契約化のメリット
    1. 3.1.業務効率と契約スピードアップ
      1. 3.1.1.関連記事:
  4. 4.次世代住宅エコポイント申請のための工事請負契約書への電子契約の対応状況
  5. 5.経営事項審査のための提出書類への電子契約の対応状況
  6. 6.2020年10月1日に追加された本人性についても技術要件が認められています
  7. 7.まとめ



2019年12月26日(木)当社の電子契約サービス「WAN-Sign」がグレーゾーン解消制度で建設業法における適法性を確認されました。(リリース記事はこちら

ここでは、認定を受けることの意義と活用について解説させていただきます。


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グレーゾーン解消制度とは

産業競争力強化法に基づく制度で、経済産業省による新規事業創出の一環です。新たな画期的サービス等が既存の法律や規制などに抵触していないか、いわゆる「グレーゾーン」と照会し、解消することにより、お客様が問題なくサービスをご利用いただけるものであると確認することができます。


建設業界の工事請負契約

多数の工事契約が締結される建設業界では、各工事の契約金額が大きくなりやすいことから、契約書の原本性と見読性が重視されています。具体的には、建設業法施行規則第13条の2第2項に規定される技術的基準(建設業法第十九条第三項に規定する情報通信の技術を利用する措置に係る技術的基準)に適応していることが求められています。

つまり

「当該契約の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものであること」

「ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること」

この2点が求められているため、この技術的基準に適合する電子契約でなければ、建設工事請負契約を受けることができませんでした。


電子契約がグレーゾーン解消制度で確認されることの意義

ここ数年、契約書の電子化市場は拡大しており、特に企業間で交わされる契約書では、書類申請時の手間やコストが発生するため、電子化のニーズが急増しています。建設業界でも電子契約の仕組みを適用することで、大幅な業務負荷の軽減を図れます。つまりグレーゾーン解消制度で適切な技術的措置が取られていると確認された電子契約サービスをご利用になるお客様は、住宅の施工、リフォームなど、大きな金額の工事請負契約に関する取引においても、安心して電子的な契約締結し、印紙税などのコスト削減や業務効率化を推進できます。

電子契約サービスの市場・普及率は伸び盛りですが、契約行為のため相手方がいることですので、実際にシステムを導入して対応する段となって、原則や法律に準拠しているか、リスク管理の観点からご不安に思われることもございます。グレーゾーン解消制度を利用することで電子契約サービスに関する法的解釈がより明確化され、安心して利用いただけることが可能になります。


WAN-Signの活用範囲

次に、当社の電子契約サービス「WAN-Sign」が、グレーゾーン解消制度で、建設業法施行規則第13条の2第2項の技術的基準に適合していると確認された具体的な事項をご紹介いたします。「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン」には、見読性と原本性の確保について述べられており、電子契約サービス「WAN-Sign」は下記の対応により、技術的基準の要件を満たしていると考えております。


>>電子契約における契約書の文言とは?変更箇所や注意点を紹介


見読性の確保について

電子契約サービス「WAN-Sign」に文書原本保管機能を有しており、インターネットに接続できるパソコンからWebブラウザ経由で電子契約サービス「WAN-Sign」にアクセスすることで、建設工事請負契約書をPDFファイルとして閲覧、印刷、ダウンロードすることが可能です。


原本性の確保について

電子契約サービス「WAN-Sign」には、公開鍵暗号方式による電子署名及びタイムスタンプを付す機能を有しているので原本性は確保されます。電子署名に利用する電子証明書は、認証局であるGMOグローバルサイン株式会社の審査を受け、合格した認証局から発行される信頼された電子証明書を利用します。電子証明書は発注者(甲)、受注者(乙)に発行され、甲乙それぞれが電子署名を付す仕組みとなっております。


  • 当社の電子契約サービス「WAN-Sign」は、契約締結したPDFデータに「署名済み」であること、「署名者情報」「タイムスタンプ」が記載され、コピーしても原本性が担保されます。
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  • 証拠力を維持するため、改ざん防止の措置が取られており、不正な処理が行われると、PDFの原本性が無効であることを検知できます。

  • 上記に基づき、当該契約の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができ、ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていると見なせます。


>>電子契約における電子署名とは?電子サインとの違いを紹介


電子契約化のメリット

電子契約には大きく分けて「コスト削減効果」、「業務効率と契約スピードアップ」、「コンプライアンス強化」、「他業種との取引に対応可能」の4つのメリットがあります。中でも施主・元請け・下請けと様々な工事関係者の間で数多く受発注が行われる建設業界では、特に「業務効率と契約スピードのアップ」によるメリットが注目されます。


業務効率と契約スピードアップ

書面契約の場合、まず契約書を作成し印刷、押印、封入を行い郵送します。そしてそこから相手方の返送作業を待つことになります。何社にも渡る契約や内容変更が必要となった等、結局締結するのに半年近くかかってしまった事例も少なくありません。

電子契約を導入することで印刷、印鑑による押印、封入作業を削減し、PCやスマートフォンなどのインターネットへ接続できる機器と環境であれば、いつでもどこでも契約業務を行うことができます。そのため業務効率と契約のスピードアップが可能になるのです。


関連記事:

電子契約とは?4つのメリットを解説



次世代住宅エコポイント申請のための工事請負契約書への電子契約の対応状況

次世代住宅ポイント制度とは、国土交通省が支援する制度で消費税率10%が適用される 一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能等を満たす住宅や家事負担の軽減に資する住宅の新築やリフォームをされた方に対し、さまざまな商品と交換できるポイントを発行する制度です。(詳しくはこちら

WAN-Signで締結した「工事請負契約書」の提出することにより、次世代住宅エコポイント申請の対応が可能になります。
こちらは国土交通省の次世代住宅ポイント事務局に照会し対応の確認ができました。


「国土交通省の次世代住宅ポイント事務局より回答」

  • ワンビシアーカイブズの電子契約サービスWAN-Signは、契約者が印鑑の画像を登録できるので印刷した際にも印鑑が確認できる。

  • 次世代住宅ポイントは、必要な契約内容が記載されており契約者が双方合意したことが 確認できれば、書面・電子に関わらず申請は可能であり、電子契約サービスWAN-Signは 両者の印鑑画像を印刷し確認もできるため、工事請負契約書(PDF)のみの提出で可能である


>>電子契約を相手方に求められた場合の対処法と導入を求める際の説明事項を紹介


経営事項審査のための提出書類への電子契約の対応状況

経営事項審査とは、国、地方公共団体などが発注する公共工事を直接請け負おう場合に、必ず受けなければならない審査のことです。(出展:国土交通省HPより)
この審査に必要な書類である工事請負契約書ですが、この度WAN-Signで締結した契約書を印刷して提出することが可能であると確認ができました。


提出する書類の重要な点は

  • 経営事項審査に関する内容が記載されており、
  • 契約者が双方合意したことが確認できること

この2点であり、WAN-Signは電子契約であっても契約書(PDF)に両者の印影画像を記載することができるため、印刷した場合でも「契約者が双方合意したことが確認できる」として判断されました。こちらは国土交通省の関東地方整備局に照会し、対応の確認ができました。

また、先般リリースした締結証明書挿入機能を利用すれば、より分かりやすく契約書が双方合意したことが確認することができます。
リモートワーク・テレワーク(在宅勤務)を推進する電子契約サービスを、安全・効率的に活用いただけるエンタープライズ向けの機能を拡張しました(2020年7月28日)

2020年8月28日:追記


>>電子契約を印刷した場合はどうなる?印紙税の有無や適切な保存方法を紹介


2020年10月1日に追加された本人性についても技術要件が認められています

当社が紹介した建設業法施行規則第13条の2第2項ですが、国土交通省により令和2年10月1日付で建設業法施行規則が改正され、第13条の4第2項となりました。これにより技術基準について新たに3号が新設され、「見読性」「原本性」に並び、「本人性」についても求められています。

(建設工事の請負契約に係る情報通信の技術を利用する方法)
第十三条の四
(略)
2前項に掲げる措置は、次に掲げる技術的基準に適合するものでなければならない。
一・二(略)
三 当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること。
出典:国土交通省令第六十九号 案文より


ここで示す「本人性」の要件について、同月14日グレーゾーン解消制度を利用して、建設業法上利用可能な電子署名をめぐる新たな照会に対する回答が公開されました。

2020年10月14日:グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答がありました


回答書には電子証明書による電子署名ではない、立会人型・事業者署名型サービスを提供する照会者において新設の技術水準(本人性)を満たせるのか?という確認に対し、回答がなされています。

5.確認の求めに対する回答の内容
照会者が提供するサービスにおいては、
(略)
③契約当事者による本人確認措置を講じた上で公開鍵暗号方式 による電子署名の手続きが行われることで、契約当事者による契約であることを確認できると 考えられることから、建設業法施行規則第十三条の四第二項に規定する技術的基準を満たすも のと解される。


つまり契約当事者同士による本人確認が行われているのであれば、新設の技術要件である本人性を満たしていることが回答されました。

この点について、当社のWAN-Signは、立会人・事業者署名型である「認印版」と、当事者型である「実印版」の両タイプを保有しております。
これらの両タイプが本人性の技術要件を満たしているか、2020年11月20日に国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課へ電話で問い合わせを行いました。その結果、メールから契約締結に入る際に独自のパスコード(アクセスコード)を付与する、あるいはアカウントを保有する当事者同士が実印相当の電子署名を行う機能が実装されているため、「WAN-Sign【実印版】および【認印版】は、それぞれ従来の見読性および原本性の確保に加え、本人性も確保していると見なすことができる」という主旨の回答を得ることが出来ました。

2020年12月8日:追記


まとめ

電子契約を導入する場合、事前に相手方からの承認を得なければなりません。その際に建設業法の技術的基準に適合しているかどうかが重要になります。建設業法上で適法性を受けたWAN-Signであれば、安心して契約業務を行うことができます。


>>電子署名とは?導入のメリット・デメリットと必ず知るべき注意点



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