電子契約の保管は契約書のスキャナ保存も含む?電子文書との違いとは


目次[非表示]

  1. 1.紙の契約書をスキャナ保存したデータの扱い
    1. 1.1.民亊訴訟でのスキャンデータの扱い
    2. 1.2.法人税法でのスキャンデータの扱い
  2. 2.電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の条件
    1. 2.1.税務署長の承認が必要
    2. 2.2.スキャナ保存の要件をすべて満たす
  3. 3.電子契約で作成した契約書データの扱い
    1. 3.1.民事訴訟での扱い
    2. 3.2.法人税法上の扱い
  4. 4.電子契約サービス「WAN-Sign」の導入がおすすめ



文書保存の負担を減らすために、紙の契約書をスキャンしてデータ保存することがあると思います。しかし、データで保存をしたから、契約書の原本は破棄しても良いわけではないのです。注意しないと契約に関する裁判が起きた場合に不利になったり、契約書の保管を定めた法律の規定に違反したりしかねません。初めから電子契約で作成した電子文書の保管と、紙の契約書をスキャナ保存した電子文書では、その扱いが大きく異なります。
今回は、紙の契約書をスキャナ保存するにあたっての注意点と、法人税法や電子帳簿保存法で認められたスキャナ保存方法について解説しましょう。


>>スキャナ保存の負担が軽減できる電子契約サービス「WAN-Sign」


紙の契約書をスキャナ保存したデータの扱い

契約書の保存に関して注意しておきたいのは、民事訴訟での扱いと、税法上での扱いについてです。
それぞれについて、詳しく解説します。


民亊訴訟でのスキャンデータの扱い

契約の相手方とトラブルになり、民事訴訟で決着をつけることになった場合、契約の内容を証明するには、裁判所に証拠として契約書を提出することになります。

民事訴訟で文書を証拠として提出する場合、民事訴訟規則143条にあるとおり、原本を提出するのが原則です。
しかし、紙の契約書をスキャナ保存したものは「原本」ではなく「原本のコピー」として扱われるので、これを印刷して提出しても原本を提出したことにはなりません。スキャナ保存した契約書のデータを原本として取り調べてもらうという方法もありますが、相手方が「契約書原本の内容と違う」と主張してきた場合、裁判所がデータを原本と同等のものとして扱ってくれるかは未知数です。

そのため、民事訴訟に提出する可能性のあるものは、スキャナ保存しても原本である紙の契約書を廃棄しないことをおすすめします。
なお、初めから電子署名を使った電子契約システムで契約した電子文書であれば、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)第3条により、原本として認められています。


法人税法でのスキャンデータの扱い

法人は、法人税法施行規則によって契約書を保管しなければいけない期間が決められています。同規則59条により原則として7年、欠損金が生じた事業年度については、その時期に応じて9年または10年間契約書を保管します。 ここでいう契約書とは、もちろん原本である紙の契約書のことで、スキャナ保存したデータは認められません。ただし、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)の規定により、一定の条件を満たした場合は、スキャナ保存した電子データを保管することで、紙の原本の保管に代えることが認められています。


>>電子契約における契約書の文言とは?変更箇所や注意点を紹介


全社導入前に押さえておきたい7つのポイントバナー

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の条件

紙の契約書原本の代わりにスキャナ保存した電子データを保管する場合、ただ契約書をスキャンするだけでは不十分です。電子帳簿保存法に適した保存をするためには、下記のように、法律上満たさなければいけない条件が定められています。


税務署長の承認が必要

データを適法の状態でスキャナ保存するため、まずはデータでの保存を開始する日の3ヵ月前までに管轄税務署に承認申請書を提出し、税務署長の承認を得ることが必要です。

提出にあたっては、「申請書」「承認を受けようとするシステムの概要を説明した書類」「システムの操作説明書」「電子計算処理に関する事務手続きの概要書」といったものが必要になり、なかなか手間のかかる手続きといえます。
なお、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が認証するソフトウェアを使用する場合は、簡素な形の申請書での申請が可能で、操作説明書などの貼付も不要です。


スキャナ保存の要件をすべて満たす

データを適法の状態でスキャナ保存するためのもうひとつの条件は、データの内容やスキャナ装置、システムといった、備えるべきとされる要件をすべてクリアすることです。

税務署長の承認を得た上で、電子帳簿保存法施行規則が定める下記の要件を満していれば、スキャナ保存データを紙の契約書の保管に代えることができるようになります。


■電子帳簿保存法施行規則が定めるスキャナ保存の要件

文書データの真実性の確保
  • 税務署長の承認を得た後に作成または受領する契約書については、作成または受領後すみやかにスキャナ保存を行うこと(施行規則第3条5項1号イ・ロ)
  • スキャナ装置は解像度が200dpi(A4サイズで約387万画素相当)以上であり、かつカラーが赤・緑・青それぞれ256階調以上で読み取れるものであること(施行規則第3条5項2号イ)
  • 解像度およびカラー情報が保存されていること(施行規則第3条5項2号ハの1)
  • 文書の大きさ情報が保存されていること(施行規則第3条5項2号ハの2)
  • スキャナ保存を行う際に、一般財団法人日本データ通信協会が認定するタイムスタンプ(電子データがある時刻に確実に存在していたことを証明するためのもの)が付与されること(施行規則第3条5項2号ロ)
  • データの訂正や削除を行った履歴が保存されていること(施行規則第3条5項2号二)
  • スキャナ保存した者やスキャナ保存した者を直接監督した者の情報が保存されていること(施行規則第3条5項3号)
見読環境の確保
スキャナ保存したデータの保管場所に、パソコン、14インチ以上のカラーディスプレイ、カラープリンタおよびこれらの操作説明書を備え、保存したデータをすみやかにディスプレイ上および書面に出力できること。
なお、出力したものは整然とした形式であり、紙の契約書と同程度に明瞭であること、また拡大または縮小しての出力が可能で、4ポイントの大きさの文字を認識できることが求められる(施行規則第3条5項6号)
適正事務処理要件の充足
「適正事務処理要件」が満たされていること。具体的には、契約書の受領から入力までの各事務について、下記の3項目に関する規定が定められており、その規定にもとづいて各事務処理が行われていること(施行規則第3条5項4号)

  1. 相互に関連する各事務についてそれぞれ別の者が行う
  2. 各事務にかかる処理内容を確認するため、定期的な検査を行う体制および手続きが整っている
  3. 事務にかかる処理内容に不備があると認められた場合、その報告、原因究明および改善のための方策の検討を行う再発防止体制が整っている
関係書類等の備えつけ
スキャナ保存したデータの保管場所に、電子計算機処理システムの開発関係書類等を備えつけること(施行規則第3条5項7号、同3条1項3号)
相互関連性の確保
スキャナ保存した契約書と関連する国税関係帳簿の記録とのあいだで、相互に関連性が確認できるようになっていること(施行規則第3条5項5号)
検索機能の確保
スキャナ保存した契約書データの記録事項を検索できる機能を確保しておくこと。なお、検索機能は、下記の3つの条件を満たす必要がある(施行規則3条1項5号、同3条5項7号)

  1. 取引年月日、勘定項目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索の条件として設定できる
  2. 日付または金銭に関わる項目は、その範囲を指定して検索ができる
  3. 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索条件を設定できる)


>>電子帳簿保存法をわかりやすく解説!


電子契約で作成した契約書データの扱い


紙の文書を交わす代わりに、電子文書に契約当事者双方が電子署名を使って交わす契約を電子契約といいます。
続いては、電子契約を使って作成した契約書の民事訴訟での扱いと、法人税法上での扱いについてそれぞれ解説します。


民事訴訟での扱い

電子署名を使った電子契約システムで契約した電子文書であれば、電子署名法第3条により、原本として認められています。そのため、民事裁判において、契約の内容が法的に有効であることを示す証拠になりえます。


法人税法上の扱い

法人税法上の扱いについては、電子帳簿保存法や電子帳簿保存法施行規則に、電子契約データの取り扱いについての規定があります。電子契約データを電子帳簿保存法に適した状態で保存するためには、紙の契約書をスキャナ保存する場合と同じく、タイムスタンプの付与や検索機能の確保などが必要です。
しかし、紙の契約書をスキャナ保存する場合と異なり、事前に税務署長の承認を得る必要はありません。そのため、紙の契約書をスキャンして電子データ化するより、最初から電子契約で契約を結んだほうが、保管業務にかかる手間は少なくなります。


>>電子署名法第3条Q&Aのポイント~推定効の適用要件と注意点~


電子契約サービス「WAN-Sign」の導入がおすすめ

紙の契約書を締結してからスキャナ保存する方法は、最初から電子契約を結んでデータを保存する方法に比べて、求められる条件が厳しく、事務処理の手間もかかります。そのため、契約書の電子データ化を考えるなら、スキャナ保存を中心にするより、電子帳簿保存法に対応した電子契約サービスを活用するのがおすすめです。

ワンビシアーカイブズが提供する電子契約サービス「WAN-Sign」であれば、強固なセキュリティを備えた電子署名を使い、電子帳簿保存法を遵守した電子文書を用意できます。従来の紙の契約書などをPDF化し、原本となる紙の契約書を情報管理センターにおいて安全に保管することも可能です。
紙の契約書をスキャナ保存したいとお考えでしたら、ぜひ「WAN-Sign」の導入をご検討ください。

出典:国税庁 電子帳簿保存法関係パンフレット「はじめませんか、書類のスキャナ保存!」 国税庁 電子帳簿保存法一問一答 Ⅱ 適用要件【基本的事項】問12より


>>電子契約で紙はなくなる?書面契約との上手な管理

人気記事ランキング

タグ一覧

ページトップへ戻る