第4次産業革命の実態と企業が生き残るために必要なこと

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 2018年10月5日に政府が開催した未来投資会議にて、第4次産業革命の推進が成長戦略の一環として提言されました。この数年で、第4次産業革命が現代の社会を表すワードとして取り上げられることが増えています。

 第4次産業革命とはどのような事象を表すのでしょうか。今回は、過去の産業革命を振り返りながら、第4次産業革命について解説いたします。

第4次産業革命とは

 第4次産業革命について、総務省が2017年に発行した「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」では、以下のように表現されています。

「2010年代現在、デジタル技術の進展と、あらゆるモノがインターネットにつながる IoTの発展により、限界費用や取引費用の低減が進み、新たな経済発展や社会構造の変革を誘発すると議論される」

 また、10月5日に開催された未来投資会議で、検討の柱として取り上げられた第4次産業革命は以下のように表現されています。

「AIやIoT、センサー、ロボット、ビックデータといった第4次産業革命がもたらす技術革新は、私たちの生活や経済、社会を画期的に変えようとしている」

出典:首相官邸 未来投資会議(第19回) 配布資料5 成長戦略の方向性(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai19/siryou5.pdf

 何だか漠然としていますね。AI、IoT、ビッグデータといったワードは、他の第4次産業革命を紹介するコンテンツでも大抵の場合登場します。紹介の内容も似たようなものでしょう。では、第4次産業革命とはAIやIoTのことを意味するのかというと、正解とはいえません。

 産業革命とは、何らかの新しい技術やエネルギーの登場によって、生産活動や企業活動に劇的な発展が起きること。従来のやり方ではあり得ないほどの生産性や処理能力が現実のものとなることで、単に一部の企業の業績が伸びたり、ユーザの利便性が向上するにとどまらず、社会構造にまで大きな変化が起きることを意味します。

 AIやIoT、ビッグデータは、第4次産業革命の、恐らく重要になると予測される要素として取り上げられているだけであり、産業革命そのものを表す要素ではありません。これらの要素が引き起こす、社会構造や産業構造の変革が第4次産業革命となります。そして第4次産業革命は現在進行形の事象であり、どのようになるかという予測は様々になされていますが、実際に将来どうなるのかはまだわかりません。そのため、現時点の第4次産業革命に関する紹介は、とりあえずAIやIoTといった言葉をちりばめた、概念的、観念的な内容にならざるを得ず、漠然とした印象を受けるのです。

 ここで1度視点を変えて、これまでに起きた産業革命がどのようなものであったのか、簡単に振り返ってみましょう。

これまでの産業革命

【第1次産業革命】

18世紀後半、蒸気・石炭を動力源とする軽工業中心の経済発展および社会構造の変革。イギリスで蒸気機関が発明され、工場制機械工業が幕開けとなった。

【第2次産業革命】

19世紀後半、電気・石油を新たな動力源とする重工業中心の経済発展および社会構造の変革。エジソンが電球などを発明したことや物流網の発展などが相まって、大量生産、大量輸送、大量消費の時代が到来。フォードのT型自動車は、第2次産業革命を代表する製品の1つといわれる。

【第3次産業革命】

20世紀後半、コンピュータなどの電子技術やロボット技術を活用したマイクロエレクトロニクス革命により、自動化が促進された。日本メーカーのエレクトロニクス製品や自動車産業の発展などが象徴的である。

(出典:総務省 第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究)

 第1次産業革命では、蒸気機関と産業機械の登場により生産性が手工業から劇的に向上し、機械工業時代への変革をもたらしました。第2次産業革命では、主要なエネルギー源が石炭・蒸気機関から石油と石油を動力とする重機械、電気へと移り、重工業時代への変革をもたらしました。第3次産業革命では、コンピュータやロボットにより産業の自動化が進んだだけでなく、処理可能な情報量の劇的な増加によって、インターネットの登場・普及など通信も大きく変化しました。

 このように、新しい技術が登場・普及するだけでなく、社会構造や産業構造の大きな変革が起きることを産業革命と呼ぶのです。

 では、これまでの産業革命における蒸気機関や重工業、コンピュータのような役割を、第4次産業革命において果たす要素は何でしょうか。AIやIoTでしょうか。これらも主要な要素にはなるでしょう。しかし、これらの要素が価値を持つための、より根本的な要素があります。それが「データ」です。AIは蓄積されたデータを活用して、様々な処理やふるまいを実現します。そしてIoTは、あらゆるモノがインターネットにつながることで、様々なデータを収集可能とするものです。従来は主に業務処理や解析に用いられていたデータの収集や作成プロセス、そして活用手段の大きな進展こそが、第4次産業革命の根本的要素となるのです。

 すなわち、データを重要な経営資源として捉え、その流れや使われ方の未来に着目することが、第4次産業革命をより具体的に考えるカギとなるでしょう。

データが主役となる第4次産業革命

 ここからはデータに主眼を置いて、第4次産業革命を改めて考えてみましょう。

 ひと昔前まで、データを作成するためには、人為的な観測や計測、記録が必要でした。人がマニュアルで作成するデータは勿論、自動的にデータを収集する計測機やセンサーを用いるとしても、そこには何らかの目的や意図、人為的要素が伴いました。

 また、データを作成、収集する場合、その前の段階として目的が存在しました。業務処理、分析・解析、調査、創作などの違いはあっても、まず目的が存在し、そのためにデータが作成、収集、そして使用されていたのです。

 このデータの流れが、大きく変わってきています。例えばIoTの浸透によって、あらゆる機械、インフラからネットワークを通じて、様々なデータが収集できるようになっています。また、我々が何気なく使用しているモバイル端末なども、関心分野や購買、場合によっては健康状態などのデータまで逐一収集しています。従来とはデータの作成、収集の流れが大きく変わってきているのです。

 そしてこれらのデータの活用方法にも変化が起きています。従来のように、何らかの目的に沿ってデータが収集されることも、勿論あります。しかし、従来とは異なり様々な種類のデータを大量に収集できるようになり、更にAIなど、データの分析手段も進化したことで、「ある目的に沿ってデータを収集・活用する」ことよりも「収集・保有したデータを用いて新しい知見や情報を得る」ことにデータ活用の比重がシフトしています。

 このように、データの作成、収集、活用のプロセスが大きく変化して、これまで得られなかった情報や知見を得ることができるようになり全く新しい概念が現実となることが、第4次産業革命の実態と考えられます。よく第4次産業革命の例として挙げられる、IoTやAIによってインフラ管理が効率化したり、工場ラインの生産性が向上するといったことは、第4次産業革命の1側面にすぎないのです。

 例えば最近話題になっている、個人情報の流通基盤として仕組の整備が進められている情報銀行は、第4次産業革命の流れに乗った典型的な例といえます。他にも新しい仕組や社会基盤の登場が予想されます。データをどのようにうまく活用するかが、これからの時代、企業価値を高める要素になることは間違いないでしょう。

まとめ

 今回は第4次産業革命について、過去の産業革命の例や今起きていることを交えて解説いたしました。

 過去の産業革命では、新しい技術ややり方の登場で従来のやり方が通用しなくなり、いくつもの産業や企業が淘汰されました。現在進行形で起きている第4次産業革命でも、淘汰される企業があることでしょう。この時代の中、企業が生き残っていくためには、重要な経営資源となるデータをうまく収集し、蓄積して活用することが必要不可欠です。

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