被災企業の状況から見る災害対策の大切さ。事業継続をマネジメントすること。

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東日本大震災で被災された企業はどのような状況だったのか

被災地に本社等の重要拠点をおく当社のお客様はそう多くはありませんが、支店や工場等の事業拠点を被災地域に保有するお客様は約500社にのぼります。そのうち、実際に直接被害を受け緊急支援を要請されたお客様も、金融機関などいらっしゃいました。当社では、断水の影響でデータセンター設備の一部機能が使用できなくなったお客様に、緊急交通路を使って救援物資・冷却用の水を搬送するなどの支援活動を行いました。

宮城県南三陸町のように、重要記録文書や住民台帳、コンピュータデータなど、業務活動の再開に不可欠なバイタルレコード及びそのバックアップまで消失、という事態はまぬがれたとしても、他の自治体等においても、住民基本台帳データ等の仮復旧をはじめとして、業務再開にかかる労苦・時間、被災住民支援の停滞などその影響は計り知れません。

お客様の業務活動継続に不可欠かつ代替のきかない「情報・記録」の保全・管理を担っている我々の業界では、このようなときだからこそ、基幹サービス機能の保持・継続、そしてお客様の緊急事態支援・サポートに専念できる体制が求められています。

〔参考:1995年阪神・淡路大震災のときのこと〕

1995年1月17日の阪神・淡路大震災のときは、ポートアイランド地区やいわゆる「震災の帯」沿いの当社のお客様50数社が被災されました。当社関西センターに分散保管していたバックアップテープの緊急搬送や、余震・火災が続く中で非常時持出し文書やデータ等の緊急引取り要請が相次ぎ、当社は関東拠点からの支援体制を強化しながら最大限、対応致しました。

また、当社バックアップセンターの会員企業も被災し、一定期間災害時用システムでの代替運用を実施。お客様のデータセンターが復旧困難な状況のため、本番センター(アウトソーシング)に切り替えて数年間運用した、という災害復旧(情報システムのバックアップリカバリ)の事例もありました。

一方、震災直後から東京・中部・近畿等の被災地以外のお客様から、バックアップシステムの拡充やメンテサイクルの短縮の相談があったほか、お取引のない企業・団体等からも災害復旧計画(ディザスタリカバリプラン:DRP)策定支援などの問い合わせが相次ぎました。

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とにかく、「備え」が大切

◇「想定外」のチェックを

東日本大震災でも、いろいろな『想定外』が発生しています。国や自治体、各専門機関、また個々の企業において、そうした記録やデータの収集・整理、分析、そして対応策の検討が大切です。

 気象庁や専門機関でも、プレート境界型(海溝型)でM9クラスの巨大地震、大津波など、ここまでの規模の想定はありませんでした。阪神・淡路大震災では地震の「空白域」が議論になりましたが、長い地球の時間感覚では、エネルギー蓄積のGPS測定技術などを使ったとしてもすべてを解明・予測することは困難です。しかし、「地震は防げないが、震災は防げる、減災する」という不断の想定練り直しこそが肝要です。

また、防災対策として初動・応急復旧・復興の要である、市町村、行政・自治体組織の多くが壊滅的な打撃を受けています。近畿各県による県単位分担支援協定に見られるように、周辺の自治体や、県、他県、国、あるいは民間との縦横・重層的な連携支援体制が重要です。

〔参考:東日本大震災から気づくさまざまなこと〕

  • JR東日本東北新幹線の安全停止(9秒前)、早期地震検知システムで脱線事故"0"
  • 携帯電話のアキレス腱「停電」、安否確認・緊急連絡方法の見直しへ
  • ツイッターによる安否確認の活躍
  • ホンダ「自動車・通行実績情報マップ」、競合各社との協力による情報連携サービス
  • 世界も驚嘆する日本の復旧力、震災後6日で高速道路復旧(事前の災害応急対策協定による準備)

など、いろいろな事柄から想像力をもって「想定」をチェックすることが大切です。

◇情報システムの復旧体制見直し

危機管理体制、危機対応計画の見直しとともに、情報システムのバックアップリカバリ、ディザスタリカバリ(BR/DR)体制の見直し強化が急務です。

〔参考:発生タイミングによる被災影響度の違い〕

金融機関や自治体での窓口営業時間や、当日分のデータ入力が終了する時間、データバックアップの時間など、地震の発生時期や時間によって異なるデータの損失・業務中断リスクをいかに極小化するか、という視点も必要です。

〔参考:首都直下地震の切迫〕

政府(中央防災会議)の防災戦略や対策要綱などは、「東京湾北部」を震源とした被害想定に基づいています。東京都BCP策定支援事業による中小企業全35社の内、28社が東京湾北部や多摩直下地震を想定したシナリオで、実践的BCP(事業継続計画)を策定されています。

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今できる事前対策

◇地震災害対策の基本に立ち返り

情報システムや重要業務の所在地は、湾岸部・埋立地、幹線・渋滞道路沿いや屋外石油タンク近在など"危ない"ところは回避。避けられない場合には、代替方法や疎開策を講じ、備えを強化すべきです。

また、非常時対応の計画策定やテスト・訓練の段階から、実行上、経営トップと現場のシンプルなラインで、状況に応じた危機対応力の醸成が喫緊の課題となっています。

◇経営管理手法としてのERMやBCPも大切、しかし、総点検が必要

BCPは必要大事、しかしそれは一定の想定シナリオによる約束事に過ぎません。BCPの策定は、そのテスト・訓練で、非常時の感性や危機対応力を、組織や人に培うことが目的です。BCPのマニュアル「紙」を創り上げてひと安心し、放置していては、メンテナンスすら曖昧となり、かえって危険です。

もう一つの重要なポイントは、こうした自然の脅威による大規模災害時には、「継続」より、むしろ新型インフルエンザのパンデミック対応に見られたように、自ら「中断・縮退」「停止」し、被害の極小化と安全確認後の「再開」を期す、弾力のある"復原性"を軸にすべきではないかと思われます。 

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最後に.被災企業にならないことが重要

自社が被災企業にならないこと、を経営目標に明確に設定。その取り組みによって、地域社会や取引先、サプライヤー、同業他社を非常時に支援救済することも可能となります(自助・共助・公助、そしてボランティアの側面支援や避難者雇用など)。そのために、在庫の調達ルートを複数確保する、代替策を用意する、拠点ごとに備蓄する、業界での仕様/規格の標準化を進める、事業所ごとの最小人員体制・在宅勤務、縮退運転・操業準備等の検討が急務です。

そして、復旧・復興の原動力でもある社員・家族などの個々人の無事、安全確保が、その大前提です。

※本コラムの内容は、2011年4月現在のものです。

執筆者名プロフィール

執筆者名 経営企画部

株式会社NXワンビシアーカイブズ 

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