事業継続・災害対策

情報資産管理の視点で事業継続性を考える

  • 2017.01.31
  • 株式会社ワンビシアーカイブズ
情報資産管理の視点で事業継続性を考える

はじめに

当社では、東日本大震災が情報資産へもたらした影響について次の2つの調査を実施した。

  1. 被災地3県を中心とした訪問調査
    「東日本大震災の影響把握のための訪問調査」(訪問件数:60社)
  2. 全国1万社の企業を対象とした郵送調査
    「情報資産管理に関する意識調査」(有効回収数:1,491社)

全国の企業・団体の皆さまの事業継続体制の強化への取組みを支援すべく、その結果の一部を紹介したい。

東北地方太平洋沖地震の基本情報

ライフラインの被害状況

東日本大震災の概要

海溝型地震による巨大な地震エネルギーと大津波は、一部地震学者等の警鐘はあったものの、多くの人々にとって「想定外」の規模であった。

電気や通信などライフラインや道路、鉄道、港湾被害などを含め、経済被害は事前の想定(約1兆円)を大きく超えて、約16.9兆円規模と算定されている(2011年6月24日内閣府発表)。

被災地3県を中心とした訪問調査結果

当社は、2011年5月に震災調査チームを発足し、被災地3県を中心とした訪問調査「東日本大震災の影響把握のための訪問調査」(訪問件数:60社)を実施した。

行政、医療機関、製造業を中心とした企業・団体を訪問し、情報資産に関する被害状況とその影響をヒアリングした。

ここではその一部を紹介する。

1)自治体の情報資産の被害状況

地震の揺れによるコンピュータ機器類の破損は、事前の対策もあり多くはなかったものの、停電で通信が使用できない状況下で、必要な情報を使用することができなかった自治体が多い。

災害直後に必要な住民台帳、本人確認情報などの重要情報を閲覧できず、罹災証明書の発行などのサービス提供が停止または遅延した場合もあった。

バックアップデータを取得していても同時被災したことから、その保管場所やサーバの設置場所が問題となった。書庫においては散乱がひどく、多くの書類が津波等により被害を受けた。

三陸沿岸部のある自治体では、津波により沿岸部にある支所が全壊し、尊い人命が失われ、重要行政情報である文書およびバックアップデータが流失している。

また本庁舎とは別の建物の地下1階を書庫として、長期保存書類を保管していたが、津波で水没し、水に濡れた文書は調査で訪問した時点(2011年9月)もそのままで保管されていた。

2)情報資産に関する震災後の災害対策動向

(1) 国や自治体等の動き

震災後1ヶ月余り、中央防災会議は専門調査会を設置し、東北地方太平洋沖地震による地震・津波の発生や被害の状況等を分析し、今後の対策等を審議したのち、「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告」(2011年9月28日)を公表した。

それを受ける形で、東海・九州地方の自治体のほか、埼玉県など内陸部の県(※)も含め、全国的に津波被害の想定やハザードマップ作成・見直し作業が進められつつある。

※実際に、津波は北上川を50km以上遡上した。

特に、一極集中の東京圏においては、直下型地震の切迫性が警鐘乱打される中、首都機能の保全・代替策、省庁共同データセンター機能等の災害対策やバックアップ・リカバリー体制など危機管理上喫緊の課題が山積している。

各自治体は個別に行政文書の保全やバックアップデータ等の遠隔地分散保管対策を講じてきているが、福岡県では、県の協議会で企画・立案しながら、調達の選定基準や運用ガイドラインを策定し、実行・推進している。これは、広域的な災害に対し、地域全体の災害対応力を強化する観点からも、1つの望ましい事例である。

このような県単位・地域単位の取組みは四国や東海地震周辺地域、および首都圏でも見られ、今後広がっていくものと思われる。

同様に、震災で被害の大きかった医療分野でもこうした取組みが活発化しており、災害医療や健康・介護との包括ケア問題を含め、二次・広域医療圏など地域医療再生や復興特区の流れの中で、病院医療体制の災害復旧・支援対策の議論、研究が本格化している。

被害状況に関するヒアリング結果

(2) 民間企業の動き

震災では地方金融機関の店舗・ATMなどの限定的被害に止まった金融・決済システム分野でも、金融当局が事業継続計画(Business Continuity Plan、以下BCP)の実効性確保に向けた整備状況や、被災想定の見直し・対策強化への対応などをフォローする方針を示している。

個別の金融機関においても地震・津波対策の取組みが急ピッチで進みつつある。

訪問した民間企業の場合、建物全壊が5割を超える壊滅的な沿岸部の中小企業と異なり、直接的被害は少なく、またBCPをほぼ全社作成、保有していた。しかし、本社やデータセンターなど主要拠点を対象としたもので、事実上、地方の事業所・工場は対象外の状況である。震災に遭遇し混乱する中、現場の判断、対応力で何とか凌いだ、というのが実態であった。

広範囲な被害では個々の企業だけでは対応しきれない状況も多く、所管官庁・業界団体の取組みと併行して、既に多くの企業および企業グループが顧客や取引先、またライフラインや地域社会との連携も考慮し、既存の防災計画やBCP等の見直しに着手している。

そして、地震・津波だけでなく停電による影響を長期にわたり受けたことで、事業継続にかかわる外部委託先の選定に新たな基準が加わった。

情報資産に関しては、重要文書の安全確保のため、電子化によるバックアップ対策が注目されている一方、電力供給不安による停電対策として、紙媒体での保存の重要性も見直されている。

また、バックアップデータの保管場所を浸水や液状化の恐れのない遠隔地へ見直すことはもちろん、データセンター等のバックアップサイトの選定には、主要拠点と異なる電力エリアや、原子力発電施設から周囲30km超を意識したエリアを探す動きが見られる。特定非営利活動法人日本データセンター協会の調査報告では、データセンター施設は東京首都圏で7割強と正に一極集中といえる状況だが、震災後、九州などの地方拠点化が進みつつある。

※本コラムの内容は、当時、社団法人日本画像情報マネジメント協会発行の『月刊IM2012年3月号』(2012年2月15日発行)P12-14に掲載されたのものです。

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経営企画部 TEL:03-5425-5400

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