磁気テープの寿命は30年? データ長期保存で起きる問題とは

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 経営資源としてのデータの価値向上、データ管理に関わるコンプライアンス問題の頻発などを背景として、各業界の企業・団体においてデータの保存期間が長期化しています。代表的な事例として、研究に関するデータ改ざんなどの不正が相次いだことを受けて日本学術会議がまとめた不正対策の中で、論文等の形で発表された研究成果の基となった実験データ等の研究資料が、当該論文等の発表から10年間の保存を原則とされたことが挙げられます。(日本学術会議「科学研究における健全性の向上について」から引用)

 データ長期保存のニーズが高まる中、磁気テープは30年以上の長期保存に耐えるメディアとして市場を拡大し、多くの企業・団体で利用されています。しかし実際には、磁気テープにデータを記録しておけば30年は大丈夫、とは限りません。保存期間が長くなれば、その間に発生が想定される問題も多くなります。

 そこで今回は、磁気テープでデータを長期保存する間に発生が想定される問題と対策について解説します。

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テープメディアの寿命は?

 磁気テープの寿命は、先述の通りメーカー公表値で30年とされています。しかし本当に30年もつのでしょうか。30年間観察を続けて確かめることはできないので、社団法人電子情報技術産業委員会(JEITA)がメーカー各社の協力を得て行った、テープメディアの寿命推定実験の結果を紹介します。

 同実験はLTO(Linear Tape Open)テープの寿命を推定するために、気温55℃、湿度80%の環境下で160日間テープを保存する形で行われました。高温多湿環境で保存することで、テープを気温25℃の環境で約19年間保存したのと同じ状態にしています。

 19年に値する160日が経過した後テープをチェックしたところ、ハードの故障やエラーレートの増加は観測されず、少なくとも19年程度であれば問題なく保存できるという結論が得られました。30年であればどうなるかは同実験では結果が得られていませんが、磁気テープが数十年の保存に耐えるメディアであることは間違いないと考えられます。

(出典:社団法人電子情報技術産業委員会 データテープメディア寿命評価)

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可用性喪失への対策

 磁気テープが数十年の長期保存に耐えるメディアであることはわかりましたが、絶対に壊れない、故障しないわけではありません。保存環境によってはテープやデータが壊れて、可用性が失われる懸念があります。

 磁気テープの保存に適する環境は、気温20℃前後、湿度50%前後とされています。そして先ほど紹介した寿命推定実験でもわかるように、温度変化が激しい、湿度が高い環境での保存はテープの寿命を大きく縮めます。夏は暑くて冬は寒く、湿度の変化も大きいような普通の倉庫で保管することは避けるべきです。気温と湿度を一定範囲に保つ機能を備える、メディア保管用の倉庫で保管すべきでしょう。

 また、環境と経年による故障だけでなく火災や震災で損傷する可能性もあります。正副複数のテープを作成して冗長化を施し、離れた場所に分けて保管して被災によるデータ消失を防ぐことが必要です。

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見読性喪失への対策

 磁気テープでのデータ長期保存においてもう1つ懸念すべきことが、テープやデータが無事でも読取用のドライブやソフトウェアが無くなる事態、見読性の喪失です。

 LTOは2000年に第1世代(圧縮時容量200GB)が発売され、2017年には第8世代(圧縮時容量30TB)が登場しています。テープの世代が新しくなるとドライブも新しい世代が発売されます。現時点で最新のLTO8ドライブの場合、互換性は1世代前までとなっておりLTO7はReadとWriteが両方可能ですが、LTO6より前の世代は使用できないことになります。

 LTOは第1世代から第8世代に至るまで、約2~3年間隔で新世代が発売されています。現在の最新世代テープであっても、約5~6年後に登場する世代のドライブでは使用できなくなることが想定されます。新世代のドライブが登場すると旧世代のドライブが直ちに姿を消すわけではありませんが、テープにデータを記録してから10年以内には、見読性確保のため最新世代のテープにデータをコンバートすることが望ましいと考えられます。

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まとめ

 今回は磁気テープの寿命推定に関する実験結果の紹介、および磁気テープを用いたデータ長期保存で発生が想定される問題と対策の解説を行いました。磁気テープは数十年の保存に耐えるメディアですが、データの可用性と見読性を維持して確実に保存するためには、テープの保存に適した安全な環境での保管や10年以内を目安とするコンバートが必要です。

 メディア保管庫の準備やコンバートの運用を、全て自前で行うのは大変です。ワンビシアーカイブズは、「オフラインメディア保管サービス」でデータの保存・保管を支援するとともに、テープコンバートやリストアの作業をアウトソーシングする「テープマネジメントサービス」も提供しています。ご興味があれば、ぜひ資料やサービス紹介ページをご覧ください。

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株式会社NXワンビシアーカイブズ 

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