「モリカケ問題」の本質 ~国の公文書管理の問題点~ | 株式会社NXワンビシアーカイブズ

「モリカケ問題」の本質 ~国の公文書管理の問題点~

2018.01.10  株式会社ワンビシアーカイブズ

 世間を賑わした、森友学園、加計学園問題。「忖度」(そんたく)という言葉が話題になりましたが、単なるスキャンダルではありません。この2つの事件には、公文書管理に関わる重大な問題が含まれているのです。今回は、国レベルでの公文書管理の問題点について述べたいと思います。

公文書管理法

皆さんは、「公文書管理法」という法律をご存じでしょうか?

 2009年に制定された、日本で初めて公文書の管理について包括的に定めた基本法です。文書の作成・取得から廃棄、公文書館(アーカイブズ)での歴史公文書の保存と公開まで、「文書のライフサイクル」全体を規定しています。

 法律の第1条では、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であり、国の諸活動について「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」ために重要なものとして、高い理念を掲げています。

行政文書の管理に関するガイドライン

 この法律の精神を実現する方法を具体的に示すために、「行政文書の管理に関するガイドライン」が制定されています。公文書の管理体制および作成、整理、保存、国立公文書館等への移管または廃棄、と文書のライフサイクルに沿って条文と解説が付けられ、公文書をどのように管理すればよいかが示されます。末尾には文書分類ごとの保存期間一覧表も付されています。

 また、このガイドラインは、各省庁の「文書管理規則」への準用が可能な形で作られているので、ガイドラインをもとに各省庁の個別の事情に応じた規則が制定されているわけです。

何が問題だった?

ではこの2つの事件は、公文書管理の上で何が問題だったのでしょう?

 まず森友学園問題。国有地を市場価格より大幅に安く売却した契約について、財務省近畿財務局が学園との交渉過程の記録を廃棄(消去)してしまったため、値引きが正当なものであったかどうか証明できなくなりました。当時の理財局長がいくら「正当な手続きだった」と強弁したところで、取引が適正であったどうか検証するための証拠がないわけです。

 次に加計学園問題。国家戦略特区として獣医学部の新設を認めるにあたり、内閣府から文部科学省に対して「総理のご意向」が示され、その内容が文書にされたという点です。この「総理のご意向」が何を指しているのか、そして記録された文書が(公文書としての効力をもつ)「正しい文書」であるかどうかが問題とされました。この、「正しい文書」とはいったいどのように作られた文書なのでしょう? 文書とは、書かれている内容の正確性だけでなく作成された経緯・手続きの形式、両方の要件を満たさなければなりません。当該文書が政府によって、内容が不正確であり、かつ「個人メモ」であって公文書ではない、とされたことの是非が問われました。

原因は何か?

それでは、なぜこのような問題が発生したのでしょう。

 ひとつは、「保存期間1年未満文書」の存在です。公文書管理法は第4条で、「経緯も含めた意思決定に至る過程」と「事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう」に、文書を作成しなければならないと定めています。これを「文書主義の原則」といい、ガイドラインにも示されています。しかし、これには抜け穴があります。「事案が軽微なものである場合」は文書を作成する必要がなく、「歴史公文書等」に該当しなければ保存期間を1年未満として、国民の目に触れることなく廃棄することも可能です。財務省は森友学園との売買交渉の記録を、保存期間1年未満文書として、廃棄していたわけです。

 もうひとつの問題は、「組織共用文書」という考え方です。公文書管理法第2条では行政文書(公文書)の定義として、行政機関の職員が「職務上作成し、または取得した文書」であって、「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」として保有しているものとしています。この「組織的に用いる」という点がポイントです。加計学園問題では、「総理のご意向」文書は、組織的に用いていない「個人メモ」であり、公文書には該当せず、「正しい文書」でもないという主張がなされました。文部科学省の職員が上司への報告用に作成した文書だったにも関わらずです。

公文書管理法と公文書管理条例 公文書管理法と公文書管理条例
地方自治体における公文書管理の問題点 ~旧優生保護法の事例から~ 地方自治体における公文書管理の問題点 ~旧優生保護法の事例から~

ガイドライン改訂の動き

この2つの事件を受け、先日、内閣総理大臣の諮問機関である「公文書管理委員会」でガイドライン改正について議論がされました。

 まず、保存期間1年未満文書については、改めて意思決定過程や事業の検証に必要な文書は1年以上の保存期間を定めるものとし、保存期間を1年未満として廃棄してもよい文書の例を類型化して示しました。

 次に、「正しい文書」を作成する方法ですが、打合せで作成する文書について、複数の職員による確認、発言者の合意を経て「文書管理者」(課長)が確認することで、その内容の「正確性を確保」するものとなっています。つまり、関係者の確認によって内容を、課長の確認・承認によって形式を担保したしたものだけが、公文書として「正しい文書」ということになります。

 この新しいガイドラインは、2017年中には改正されることになっています。

おわりに

以上、本ブログを読んで、「なーんだ、国の問題だから自分には関係ないや」と思ったりしませんでしたか?

でも、それは大間違いです。決して他人ごとではありませんよ。日本には企業の文書管理全体を規制する法律はありません。しかし、企業であっても、法的責任(コンプライアンス)とステークホルダー(株主、消費者、地域住民など)に対する挙証責任(アカウンタビリティ)を果たす上で、文書やデータは欠くことができません。日々耳にする企業の不祥事は多くは、文書やデータの不適切な取扱いから始まるのです。

まずは身近な書類の管理がどのようになっているのか、社内の現状を知ることから始めてみてはいかがでしょう。

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