電子署名とは?導入のメリット・デメリットと必ず知るべき注意点

(更新日:2024年2月26日)

目次[非表示]

  1. 1.電子署名とは?
  2. 2.電子署名の2つの役割
    1. 2.1.本人証明
    2. 2.2.非改ざん証明
  3. 3.電子署名の需要が高まった背景
  4. 4.電子署名法について
  5. 5.電子署名のメリット
    1. 5.1.①契約書を電子データ化できる
    2. 5.2.②収入印紙代が削減される
    3. 5.3.③契約業務スピードがアップする
    4. 5.4.④ペーパーレス化が促進する
  6. 6.電子署名のデメリット
  7. 7.電子署名の仕組み
    1. 7.1.電子証明書発行と電子署名実施・検証のプロセスの例
    2. 7.2.タイムスタンプ付与のプロセスの例
  8. 8.電子署名の導入に向けた注意点
    1. 8.1.電子化の可否
    2. 8.2.本番前の運用テスト
  9. 9.まとめ




近年、ペーパーレス化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、紙の契約書や請求書などが電子文書化され、電子署名が重要な役割を果たしています。
電子署名は電子文書の信憑性や証明力を高め、改ざん防止に役立っていますが、導入するにあたって仕組みや関連する法令について十分な理解が必要です。
この記事では、電子署名の重要な仕組みやメリット・デメリットなどを詳しく解説します。


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電子署名とは?

電子署名とは、デジタル技術を利用し、文書の本人性と改ざんのない状態を証明する仕組みのことです。
従来の紙ベースの書類では、印鑑やサインを用いて書類の本人性や改ざんのない原本であることを証明していました。
しかし、現在はインターネットの普及とシステム化の発展により、契約書や請求書などの重要書類を電子文書(PDFなど)でやり取りする機会が増えています。
例えば、PDFに押印されていた場合、容易にデータを書き換えることができます。
そこで、従来の印鑑やサインのように、電子文書が正式なものであることを証明する役割を果たすのが電子署名です。


電子署名の2つの役割

電子署名とは?わかりやすく解説します。

電子署名には、“本人証明”と“非改ざん証明”という2つの役割があります。

本人証明

電子署名は、契約書や文書を作成した本人の身元を証明します。
紙文書での押印や直筆のサインと同様に、電子署名は個人や組織によって作成され、文書に付与されます。
指定認証局が発行する電子証明書を通じて、「この電子署名は実在する人物が署名した正式なものである」ということを証明可能です。

非改ざん証明

電子署名は、文書が改ざんされていないことを証明する役割もあります。
電子データは容易に書き換えが可能ですが、電子署名を使用することにより、電子署名実施以後の改ざんの有無を検知することが可能です。
また、文書が特定の時点に存在し、その後も改ざんされていないことを証明するタイムスタンプとの組み合わせで、より高い信頼性を確保できます。


>>電子契約における契約書の文言とは?変更箇所や注意点を紹介


電子署名の需要が高まった背景

近年、電子署名の需要が高まった理由として挙げられるのが、新型コロナウイルスの影響による働き方改革です。
内閣府は、電子署名の活用促進や押印手続きの見直しを含む、『規制改革実施計画』を策定しました。この計画は、官民を問わず広範囲で推進されており、押印の廃止や働き方改革、事務処理の電子化などの取り組みが進められています。
また、テレワークの導入により、紙文書の作成や物理的な書類の交換が困難になったことも、企業が電子署名を導入する一つのきっかけとして考えられます。


出典:規制改革実施計画(令和4年6月7日閣議決定)


電子署名法について

電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)』は、2001年4月1日に施行された法律です。
この法律は、電子署名の法的な効力を規定し、電子データ上での署名が紙への押印やサインと同様に有効となるための基盤を整備することを目的としています。 
従来のビジネスシーンでは、契約書や請求書などの文書を紙で交換するのが一般的でした。紙の文書は改ざんが困難であり、押印や署名によって本人の承認が容易に確認できるため、文書の正当性を証明するために押印や署名を行います。
この点に関して『民事訴訟法第228条』では、紙に記載され、押印・署名された文書(契約書、議事録など)は、真正に成立したことが推定されると規定しています。
一方で、表計算ソフトやツールで作成された契約書・請求書などは、改ざんが容易であり、本人確認が困難であるため、紙の書類を使用した業務が依然として主流でした。
しかし、インターネットやシステムの普及により、電子データを使用した業務効率化の重要性が高まり、電子署名の需要も増加しているのが現状です。


出典①:電子署名及び認証業務に関する法律
出典②:民事訴訟法第228条


電子署名のメリット

電子署名を利用することで以下の4点のメリットが享受できます。

①契約書を電子データ化できる

電子契約書を使用することで、紙書類の保管スペースを節約できます。
デジタル形式で契約書を保存するため、大量の書類を保管する必要がなくなります。また、データベースやクラウド上で契約書を管理するため、検索や整理が容易です。
さらに、デジタル署名によって改ざんや紛失のリスクが軽減され、契約書の信頼性を向上できます。

②収入印紙代が削減される

現行の法令では、電子契約書には印紙税が課税されません。
そのため、取引金額に応じてかかっていた収入印紙代が不要となり、企業によっては大きなコスト削減が実現します。
また、紙の契約書では収入印紙が貼られたオリジナルの書類を保管する必要がありましたが、電子契約書はデジタルデータとして保存されるため、簡単に管理・保管ができます。

③契約業務スピードがアップする

電子契約書の利用により、契約業務のスピードが大幅にアップします。

従来の契約業務では、契約書の作成・印刷・押印・封入・郵送・押印・返送に手間と時間がかかっていました。
電子契約書の場合、電子データで作成された契約書の送付・返送はメールで完結します。これまで1週間以上かかっていた契約業務を、1日に短縮することも可能です。

④ペーパーレス化が促進する

契約書を電子データで作成および管理することで、ペーパーレス化を促進できます。ペーパーレス化の実現により、印刷代やインク代が大幅に削減されるメリットです。
電子署名と電子契約書の利用は、企業に多くのメリットをもたらします。しかし、電子的な契約締結を可能にするためには、取引先の合意も必要なことに注意が必要です。


>>電子契約における電子署名とは?電子サインとの違いを紹介


電子署名のデメリット

電子署名を利用する際は、以下のデメリットも把握しておきましょう。

  1. 電子化できない契約取引がある
  2. 取引先の同意なしで適用できない
  3. 既存業務フローを見直す必要がある
  4. セキュリティ対策が必須である

電子署名はデジタル技術に基づいており、利用する際には特定のデジタル環境やセキュリティ対策が必要です。
そのため、自社に技術的な知識やリソースがない場合は、電子契約サービスの提供会社によるサポートを受けることも検討しましょう。


電子署名の仕組み

電子署名では、電子証明書とタイムスタンプが揃うことで、法的な効力が生まれます。法的な効力を付与するためのプロセスは複雑なため、分かりやすく説明します。

電子証明書発行と電子署名実施・検証のプロセスの例

出典:電子署名・認証・タイムスタンプ その役割と活用


Aさんは、まず電子証明書の発行申請を認証局に対して行います。(図解①)
次に認証局が発行業務を行い、Aさんはその電子証明書を取得します。(図解②③)
Aさんは契約書に対し、電子証明書で暗号化されたハッシュ値と電子署名を付与し、電子証明書と共に受信者Bさんに送信します。 
一方でBさんは、電子証明書と契約書を受け取った後、認証局のリポジトリに対し、電子証明書の有効性を確認します。(図解④)
さらにハッシュ値の一致を確認することで、改ざんや偽装がないことを確認します。


タイムスタンプ付与のプロセスの例


出典:電子署名・認証・タイムスタンプ その役割と活用


タイムスタンプの付与は、認証局への要求、認証局による発行、検証という順でプロセスが実行されます。
利用者は、電子文書のハッシュ値と共に、時刻認証局(TSA)へタイムスタンプの要求を申請します。この申請に対し、時刻認証局はハッシュ値と時刻を記したタイムスタンプを作成し、利用者に送付します。
非改ざんの証明方法としては、原本のハッシュ値とタイムスタンプのハッシュ値が一致していることの確認により、改ざんされていないことが証明できます。
タイムスタンプの仕組みは電子署名に比べてシンプルですが、効力は大きく、電子署名を証明することが可能です。


>>法務省が指定する電子証明書とは?商業・法人登記のオンライン申請について解説します


電子署名の導入に向けた注意点

これから電子署名を導入するにあたって、注意すべき点を解説します。

電子化の可否

すべての契約書が電子化できるわけではありません。
そのため、既存の契約書に関して、電子化できるかを十分に調べる必要があります。
関連する法律や規制を確認し、対象文書が電子化可能かどうかを判断することが重要です。

本番前の運用テスト

電子署名を導入する前に、本番と同様の状況を想定した運用テストを実施することが重要です。
例えば、重要な書類のやり取りを想定し、自社の承認者や署名者も含めてフローに問題がないかを確認します。
他にも、電子署名の導入により、セキュリティ上のリスクが発生しないかをテストし、問題が発見された場合は適切な対策を講じることが可能です。
本番での運用に移る前に十分なテストを行い、システムやプロセスの安定性と信頼性を確保することが求められます。


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まとめ

この記事では、電子署名について以下の内容で解説しました。

  • 電子署名の2つの役割
  • 電子署名のメリットとデメリット
  • 電子署名の仕組み


電子署名は、契約書や請求書などの電子文書において、本人証明と非改ざんを行う重要な役割があります。

電子署名の導入は、コスト削減や業務効率化などのメリットをもたらしますが、業務プロセスの見直しとセキュリティ対策が必須です。そのため、専門的な技術とスキルが要求されます。

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監修:弁護士 宮内宏
監修:弁護士 宮内宏
所属 宮内・水町IT法律事務所 経歴 東京大学工学部電子工学科及び同修士課程卒業。 日本電気株式会社(NEC)にて、情報セキュリティ等の研究活動に従事。 東京大学法科大学院を経て法曹資格取得。第二東京弁護士会所属。

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