電子契約法とは

(更新日:2023年8月7日)

目次[非表示]

  1. 1.電子契約法とは
    1. 1.1.電子商取引における消費者の操作ミスの救済
    2. 1.2.電子商取引における契約の成立時期の転換
  2. 2.消費者の意思表示を明確にするには、具体的にどうすればいいのか
  3. 3.電子商取引における承諾通知が到達した時点とは、具体的にどのタイミングか
    1. 3.1.メールで承諾通知をした場合
    2. 3.2.Web画面に承諾通知を表示した場合
  4. 4.まとめ


電子契約法とは

電子契約法は正式名称を「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」といい、平成13年(2001年)12月25日から施行された法律です。
本法で押さえておくべきポイントは、電子商取引における消費者の操作ミスの救済と、電子商取引における契約の成立時期の転換の2つです。


電子商取引における消費者の操作ミスの救済

B2C(事業者・消費者間)の電子商取引、いわゆるEコマースサイトや専用端末からの電子契約では、消費者が操作ミスにより意図しなかった商品の購入、サービスの利用を行ってしまう場合があります。

しかし、民法第95条では「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」と策定しています。

平たく言えば「うっかりミスによる間違った契約は、無効にすることができません」という法令です。しかしこれでは、消費者にとって不利な法令であり、対処する必要があります。そこで登場したのが電子契約法です。

電子契約法では、事業者側が消費者の意思確認を行うための措置を設けていない場合、原則として操作ミスによる契約を無効とすることができます。つまり、契約内容の確認ページを設けていないEコマースサイトや専用端末では、うっかりミスによる意図しない契約を無効にできるという法令です。

これにより、電子商取引における消費者の立場が守られるようになりました。


電子商取引における契約の成立時期の転換

民法第526上では「隔地者間の契約は承諾の通知を発したる時に成立す」と策定しています。これはつまり、Eコマースなどの電子商取引においての契約は、事業者が承諾を通知した時点で成立すると解釈できる法令です。あくまで"承諾を通知した時点"なので、その通知が申込者に届くかどうかは考慮していません

これは消費者からすれば非常に不利な法令ですね。たとえ承諾通知が届いていなくとも、契約が成立したことになってしまうので、申込者には知らずのうちに負債義務が発生します。しかし、インターネットがまだ普及していない時代の契約では、承諾通知が申込者に届くまである程度時間がかかるという技術的制約があったため、こうした"発信主義"が当たり前でした。

時代が流れてインターネットが普及したことで、瞬時に承諾通知を相手に到達させることができるようになりました。それに伴い"到達主義"が徐々に浸透したことで、契約成立時期は承諾通知が申込者に到達した時点に転換されたのです。

※2020年に施行された改正民法により、契約の成立時期はすべて承諾の意思表示が相手に到達した時点となったためこの規定は既に削除されています。


>>電子契約における契約書の文言とは?変更箇所や注意点を紹介

>>電子契約関連の法律まとめ


消費者の意思表示を明確にするには、具体的にどうすればいいのか

Eコマースサイトにおいて、消費者による操作のうっかりミスは企業に損失を生みます。たとえば、消費者が1個注文したいところを11個注文してしまった場合、消費者が契約の無効を主張します。道徳観点で考えれば、こうした契約を一度無効にし、注文し直してもらうというのが妥当な対応でしょう。

しかし、注文キャンセル処理にも人手が必要であり、キャンセル後に再度注文してくれる保証はありません。これでは、企業側からすれば処理の手間だけかかったという損失につながります。しかも、Eコマース上では注文ミスが起こる可能性が非常に高いため、そうした対応コストはかなり大きなものになるでしょう。

そこで電子契約法に則って考えれば、消費者が注文の意思表示を明確にできる環境を整えることで、こうした対応コストも発生しません。消費者に対して意思表示の場を設けなければ、うっかりミスの注文は無効になるということは、裏を返せば、意思表示の場を設ければたとえうっかりミスでも契約をキャンセルできないということです。

つまり電子契約法は、消費者を守るだけでなく、Eコマース事業者など企業側の利益を守る法令となっています。では、消費者の意思表示を明確にするためには、具体的にどうすればいいのでしょうか

電子契約法の「逐条解説」では、その具体的な対策について次のように示しています。

1.送信ボタンが存在する画面上に意思表示の内容を明示し、そのボタンをクリックすることで意思表示となることを、消費者が明らかに確認できる画面を設置する。

2.最終的な意思表示となる送信ボタンを押す前に申込みの内容を表示し、そこで訂正する機会を与える画面を設置する。

Eコマース事業者側でこうした手順を踏んでいれば、消費者が間違った注文を行ったとしても、「間違った注文だから無効だ」という主張は通らなくなります


>>電子契約に関連する法律と要件を紹介


電子商取引における承諾通知が到達した時点とは、具体的にどのタイミングか

電子契約法のもう一つの目的である「電子商取引における契約の成立時期の転換」は、承諾通知が発信された時点ではなく、到達した時点で契約が成立するようになった法令と説明しました。しかし、承諾通知が到達した時点とは、具体的にどのようなタイミングを指すのでしょうか

そもそも「隔地者間の契約」とは、パソコンなどが内蔵されている機器、テレックス、留守番電話といった機器を使用して、電子的に承諾の通知が発せられる契約が対象となります。分かりやすく言えばメールやFAX、留守番電話などの利用した電子契約がそれに該当します。ここではEコマースサイトの電子商取引を取り上げたいと思います。


メールで承諾通知をした場合

メールで注文承諾を通知した場合、契約が成立するタイミングは「メールが、メールボックス中で読み取り可能な状態になったとき」となります。つまり、消費者がメールを開封する必要はなく、メールを受信し、読み取り可能になった時点で契約が成立します。

一方、消費者が利用しているメールサービスのサーバ故障が発生していて、承諾通知メールが受信されていない、あるいは読み取り不可能となっている場合は、まだ契約が成立していない状態だと言えます。

注意していただきたいのが、承諾通知メールの中に「在庫確認の上、受注可能な場合には改めて正式にメールをお送りします。」といった文面がある場合は、承諾通知メールが到達しても契約が成立しない点です。


Web画面に承諾通知を表示した場合

Eコマースサイトの中には、メールでの承諾通知を行うのではなく、Web画面上に「ありがとうございました。注文を承りました。」などの文面を表示するサイトもあります。この場合、そうした文面が表示された時点で承諾通知が到達したと判断されるので、Web画面が表示された時点で契約が成立したことになります。

ただし、通信障害などが発生してWeb画面上に承諾通知の文面が表示されない場合は、契約不成立となります。

メールでの承諾通知と同様に、Web画面上に「在庫確認の上、受注可能な場合には改めて正式にメールをお送りします。」といった文面を表示しても契約成立にはならないので、合わせて注意しましょう。


>>電子契約で紙はなくなる?書面契約との上手な管理​​​​​​​


まとめ

今回紹介したように、電子契約法とは消費者の権利を守るだけの法令ではありません。企業の利権を守るためにも、電子契約法は施行されています。従って、Eコマースサイトなどの電子商取引を提供している事業者は、電子契約法を深く理解した上で、Eコマース構築や契約方法を考える必要があります。本稿が、少しでも多くの電子書取引事業者に目に留まり、正しい契約締結の助けになれば幸いです。

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