銀行業界のBCP対策~企業が事業を継続するための計画~

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企業は地震や洪水などの自然災害、テロ行為など、様々なリスクに見舞われています。どのような事象が発生しても、企業や組織は最小限の影響で事業活動を続けることが求められています。

銀行業界は重要な金融機能の維持に必要な事業者であるため、金融庁などからも安定した金融システム維持に必要な対応を求められています。今回はそんな銀行業界のBCP対策について解説していきます。

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BCP(業務継続計画)とは

BCP(業務継続計画)とはBusiness Continuity Planningの略称であり、自然災害やパンデミックなどの緊急事態が発生した際でも、企業や組織が事業を継続するための計画です。損害を最小限に留め、素早く平常の事業活動に復旧させるために、事業継続のための方法や手段などを計画することが求められています。

新型感染症による緊急事態宣言で、突然の出社制限や企画中止などが多発したことは記憶に新しいかと思います。このようなパンデミックや地震などの大きな被害が起きてしまう事象は突然発生します。発生した際、事業活動が停滞してしまうのは致し方ありません。
しかしながら事象発生後、早期復旧が叶わない場合、事業縮小や最悪撤退に繋がることもあります。そのため素早く平常の事業活動を行えるように、BCPを導入することが求められているのです。

このBCPの特徴として経済産業省中小企業庁のBCP策定運用指針では下記と定めています。

  1. 優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
  2. 緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
  3. 緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておく
  4. 事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
  5. 全ての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図っておく

(出典)経済産業省中小企業庁:中小企業BCP策定運用方針

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銀行の中核事業

各行で違いはありますが、一般的に銀行の中核事業は顧客の資金を受け入れ、貸付し、支払いサービスを提供することと言われています。これには普通預金やローンなどの個人金融サービスだけでなく、コーポレートバンキング業務や外国為替や国際送金などのサービスも含まれています。
銀行は様々な顧客対して資金を安全に保管し、取引や送金のための支払い手段を提供します。銀行は経済活動を支え、個人や企業の資金ニーズを満たし、金融システムの円滑な運営に寄与しているのです。

このような銀行の中核事業は、市場経済の円滑な運営や金融システムの安定性にとって重要な役割を果たしています。そのため、銀行業界には様々な法的要件や規制が存在し、事業継続性の確保が求められています。

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銀行業界が求められるBCP

2023年6月に金融庁より発表された「主要行等向けの総合的な監督指針」内において、主要銀行の業務継続体制について以下のような意義を唱えています。

特に、一部地域に集中して立地し、かつ、我が国の金融システムにおいて 根幹的な役割を果たしている主要行等においては、危機発生時において、迅速な復旧対策を講じ、必要最低限の業務の継続を確保する等適切な対応を行うことが国民生活・経済にとっても極めて重要であることから、平時より業務継続体制(Business Continuity Management; BCM)を構築し、危機管理(Crisis Management ; CM)マニュアル、及び業務継続計画(Business Continuity Plan; BCP)の策定等を行っておくことが必要である。

主要行等向けの総合的な監督指針 Ⅲ-8 業務継続体制(BCM)より

つまり国民生活や経済活動において銀行は非常に重要な立場であることを理解し、常日頃からBCPの策定などを行うことで、緊急事態が発生した際は迅速な復旧対策が行える大切つくりを求められていることになります。

本指針には具体的に、BCP策定において下記のような着眼点で計画が行われているかを記しています。

業務継続計画(BCP)においては、テロや大規模な災害等の事態においても早期に被害の復旧を図り、金融システムの機能の維持にとって必要最低限の業務の継続が可能となっているか。その際、全国銀行協会及び他の主要行等と連携し対応する体制が整備されているか。また、業務の実態等に応じ、国際的な広がりを持つ業務中断に対応する計画となっているか。

主要行等向けの総合的な監督指針 Ⅲ-8-2 平時における対応より

つまり緊急事態が発生した際でも、銀行の中核事業を暫定手段でも再開できるか、そしてその行動について関係各所で連携できる体制が整備されているかを求められています。
その具体方法例としてもいくつか紹介されているため紹介します。

対策案 目的 具体例
顧客データ等の安全対策 災害があっても顧客データを消失しないように、安全対策を講じる
  • 紙情報の電子化
  • 電子化されたデータファイルやプログラムのバックアップ等
コンピュータシステムセンター等の安全対策 災害があっても業務で使用しているコンピュータシステム業務に損害が発生しないように、安全対策を講じる
  • バックアップセンターの配置
  • 要員・通信回線確保等
分散管理 これらのバックアップ体制は、地理的集中を避けているか
リカバリー計画 個人に対する決済処理等の金融機能維持に重要とされる業務が再開できる計画を講じているか
  • 暫定的な手段の策定(手作業、バックアップセンターにおける処理等)
  • 再開するまでの目標時間設定
インターバンク市場や銀行間決済システムを通じた金融決済等の重要な業務について当日中に再開できる計画を講じているか
  • 暫定的な手段の策定(手作業、バックアップセンターにおける処理等)
  • 再開するまでの目標時間設定
策定及び見直しフロー BCP策定について必要関係者への共有を行っているか
  • 策定及び重要な見直しを行うに際は取締役会による承認を必要とする
  • 内部監査、外部監査など独立した主体による検証を受ける

主要行等向けの総合的な監督指針 Ⅲ-8-2 平時における対応(2)より

(出典)金融庁:令和5年6月 主要行等向けの総合的な監督指針より

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銀行のBCP対策の現状

銀行のBCP対策の現状については内閣府が2022年1月~2月に調査した「令和3年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査」を参考に、特徴をご紹介していきます。

まず銀行を含む金融・保険業界は、各業界と比較してもBCP策定率が最も高く、81.6%となっていました。過去の推移から見ても金融業界が他業界の中でも昔からBCP対応について推進をしてきたようです。
しかしリスクについての対応は策定できていても、実際に対応するにあたり「自社従業員への取り組みの浸透」と「取組時間・人員の確保」については課題感があると回答する企業が多くありました。

BCPのためには平時より、緊急事態が発生した際の行動を社内全体で理解していることが必要になります。BCPを対応できていない金融業界も策定できない理由の大半が「取り組み時間・人員(専門家含む)の不足」が集中していたため、BCP対応のための教育リソース作りが業界内で課題感であると思われます。
そのような中で有事の際の実効性を高めるために、多くの企業が「対応マニュアルや携行資料の作成」と「訓練の実施」によって社員へ浸透させようと心がけています。金融業界についても8割以上の企業が上記を含めた何かしらの取り組みを行っていることが分かっています。

また金融業界がBCPに記載している項目について、7割以上の企業が「従業員の安全確保」「災害対応チーム創設」「水、食料等の備蓄」「重要業務の決定」「意思決定者の設定等指揮命令系統」「情報及び情報システムの維持」を記載しているようです。
そして6割以上の企業が定期的に策定したBCPについて見直しを行い、ブラッシュアップしていることが分かっています。

調査結果から見て、金融・保険業界はBCPについて他業界に比べて推進が進んでいると考えられます。

(出典)内閣府:令和3年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査

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BCP事例①:みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループ HPより

様々な金融サービスを展開しているみずほフィナンシャルグループは、自社の事業継続管理体制について、「金融決済機能の維持・継続」と「業務の早期復旧」に優先的に取り組むことを基本方針としています。
みずほフィナンシャルグループ間で、事業継続管理態勢を統一的に向上させるために、あらかじめグループのリスクを認識し、その影響を評価して対策を講じているようです。
そうすることで緊急事態発生時等の影響の極小化および業務の迅速かつ効率的な復旧を行う態勢を整備しています。

そのために、緊急事態発生時における対応と事業継続管理を専門的に担う「危機管理室」を特定のグループ会社内に設置して、事業継続管理態勢を整えています。

(出典)みずほフィナンシャルグループ:事業継続管理

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BCP事例②:りそなホールディングス

りそなホールディングス HPより

緊急事態が発生した際の対応として、りそなグループは以下のような基本方針を定めています。

<りそなグループ:業務継続の基本方針>

  • お客さま・社員など関係者の人命の安全確保を何より優先します。
  • 可能な限りの業務を継続・早期復旧することで、お客さまの生活や経済活動の維持に貢献するとともに、決済システムへの影響を抑制します。
  • 業務停止等による機会損失を最小限に抑えるとともに、資産及び信託財産の適切な保全を図ることにより、健全性を維持し経営リスクを軽減します。
  • これらの実効性を確保するため、必要な体制・インフラを整備し、適切に経営資源を配分します。

こちらの基本方針を基に、りそなグループ各社にて有事を想定した業務継続計画や各種規程、マニュアル等を策定しているとしています。
また代表執行役 (又は代表取締役) による検証を通じて業務継続体制の継続的な改善にも取り組んでいるようです。

(出典)りそなホールディングス:危機管理・業務継続体制

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BCP事例③:三井住友トラスト・ホールディングス

三井住友トラスト・ホールディングス HPより

三井住友トラスト・ホールディングスでは、リスクガバナンスの一環として、自然災害やパンデミックなどのイベントリスクを含めたリスク管理を行っています。

グループの各事業部が自事業のリスク特性の把握を行い、リスク管理の状況をリスク統括部(およびリスク管理各部)へ報告するファーストライン・ディフェンス。その報告・協議を受け取り、ファーストラインから独立した立場でリスクガバナンス体制の監督・指導を行うセカンドライン・ディフェンス。そしてグループのリスクガバナンス体制およびプロセスの有効性や適切性をファーストライン、セカンドラインから独立した立場で監査する内部監査部が担当するサードライン・ディフェンスの三線防御体制(スリーラインズ・オブ・ディフェンス)を構築しているようです。

(出典)三井住友トラスト・ホールディングス:リスク管理

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NXワンビシアーカイブズができるBCP対策

銀行を含む金融業界は安定した金融システムを維持のための対応を求められているため、多くの企業が事業継続管理に力を入れております。
しかし市場状況の変化に合わせて、計画や対応方法などにも変更が必要です。

現在はDXの推進などもあり、アナログな情報や業務を電子化するデジタライゼーションに注目が集まり、BCPの観点からも電子化のニーズが高まっています。
NXワンビシアーカイブズでも電子化サービスを活用して、お客様の業務プロセスの再構築の支援を行ってきた実績がございます。

業界での実績などについてはこちらのページで取り上げておりますのでご興味ある方はご覧ください。

執筆者名プロフィール

執筆者名 花 理恵子

株式会社NXワンビシアーカイブズ 
営業統括部 営業1部所属

銀行・証券会社を中心とした金融業界担当の営業部、営業1部で活動中。

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