
クラウドストレージサービスは、フォルダ作成や構成、格納ファイルの使用、コピーや削除など、社内ファイルサーバに近いレベルの操作感、利便性で使用できるものが多くあります。また、作成中のファイルや複数名で共有しながら更新することもできるので、作成中のファイルや頻繁に利用するファイルの管理において優れているといえます。更新のたびにバージョンが保存されるタイプのクラウドストレージサービスであれば、誤った更新や削除の際にも過去バージョンの復旧によって対応することができます。
課金単位は、ストレージの容量、保管データの合計容量、ユーザアカウント数などサービスによって異なりますが、数千円程度の料金から利用できるサービスが多く、基本的には安価です。
サービスの性質上、データがインターネット上に置かれることや、IDとPWがあればストレージにアクセスできてしまうこともあり、セキュリティ面の不安についての指摘は少なからず存在します。しかし、優良なサービス事業者であれば、サービス品質を守るためにもセキュリティ対策には力を入れているはずです。システムに脆弱性を抱えている企業であれば、オンプレミスの環境でデータを保管するよりもクラウドストレージで保管することで、より適切なデータ管理が実現できる場合もあります。
閲覧のしやすさ、更新のしやすさといった利便性はクラウドストレージの特徴ですが、重要なデータの保管においてはデメリットをもたらす場合があります。重要なデジタルデータの保管、特に長期保存が必要なデータの場合には、データの原本性の維持や証明が必要となることがあります。改ざん防止や改ざんされていないことの証明などが該当します。
この点において、容易にファイルの閲覧や更新ができるクラウドストレージは不適とされることがあります。
クラウドストレージで保管されていたデータが、システム障害によって消失してしまった事例は複数あります。磁気テープなどのメディアに記録したバックアップデータを用いて復旧できたケースもありますが、バックアップデータにも消失が反映されて復旧不可となったケースもあります。重要なデータをクラウドストレージで保管するのであれば、他のメディア等にもバックアップデータを記録しておくことがデータ保護の観点から望ましいと考えられます。
ストレージ容量あたりの価格やIDあたりの価格は安価なことが多いクラウドストレージですが、データをダウンロードする際に別料金が発生、更にダウンロード速度等の設定によっては非常に高額の料金が発生する可能性があります。また、利用開始時点では低価格、あるいは無料をうたっていたサービスが、しばらくしてから想定外の値上を行うこともあります。
値上による費用負担増を避けるためにサービスを解約する、という選択肢はあります。クラウドストレージに保管しているデータ量が少なければ、ダウンロードが有料の場合でも問題なくデータを引き上げることができるかもしれません。また、保管しているデータが消えても社内でバックアップを保管している等の理由で復旧可能、という状態であれば、解約と同時に保管していたデータが削除されるようなサービス利用規約となっていても、大きな問題とならない場合もあります。
しかし、会社のデータの大半がクラウドストレージに保管されている、あるいは大容量の重要なデータがクラウドストレージに保管されているような場合には、利用料金の値上を受け入れるか、高額のダウンロード料金を覚悟の上でデータを引き上げるかの二択を迫られることになる可能性もあります。
大手クラウドサービス事業者には外資系企業が多くあります。これらの事業者が提供するクラウドストレージのサービス基盤であるデータセンターも、海外所在であるケースが多くあります。
データセンターが海外所在の場合、センター内の機器および内部のデータの取り扱いについても、所在国の法律、ルールが基本的に適用されます。法律やルールの内容によっては、クラウドストレージに保管していた機密情報が強制的に公開されるような事態が生じる可能性もあります。
これまで述べてきたように、クラウドストレージには優れた点が多くある一方で、重要なデジタルデータの保管、長期保存の手段としては、適していない要素も複数あります。セキュリティや災害対策、長期保存に適した環境や適正な利用コスト等を備えた手段を選択すべきです。
デジタルデータは消失すると大量のデータが同時に失われる可能性があります。どのような活用をしたいかによって、保管に適した環境は変わると思います。是非今回の内容を参考に、ご検討いただければと思います。
執筆者名 ブログ担当者
株式会社NXワンビシアーカイブズ
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