
電子帳簿保存法とは、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。電子帳簿保存法の基本的考えとして、国税庁は次のように述べています。
「新しい時代の流れに対応し、納税者の帳簿書類の保存の負担軽減を図るために、記録段階からコンピュータ処理によっている帳簿書類については、電子データ等により保存することを認めることが必要であると考えます。その際には、コンピュータ処理は、痕跡を残さず記録の遡及訂正をすることが容易である、肉眼でみるためには出力装置が必要であるなどの特性を有することから、適正公平な課税の確保に必要な条件整備を行うことが不可欠です。また、電子データ等による保存を容認するための環境整備として、EDI取引(取引情報のやり取りを電子データの交換により行う取引)に係る電子データの保存を義務づけることが望ましいと考えます。」
引用:国税庁ホームページ「制度創設等の背景」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/01.htm
電子帳簿保存法はこのように、帳簿書類の電子データ化へのニーズを考慮し、情報処理技術の現状を踏まえた上で制定されました。
ここでは電子帳簿保存法を理解する上で、押さえておきたい重要なポイントについて紹介します。
電子帳簿保存を行うためには、次のような書類の作成・手続きが必要となります。
≪スキャナ読み取りによる電子帳簿保存の場合≫
①国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書
②承認を受けようとする国税関係書類の保存を行う電子計算機処理システムの概要を記載した書類
③承認を受けようとする国税関係書類の保存を行う電子計算機処理に関する事務手続の概要を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書の写し)
④申請書の記載事項を補完するために必要となる書類その他参考となるべき書類その他参考書類
参考:国税庁ホームページ「[手続名]国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/3030_01.htm
申請者は電子帳簿保存を開始する日の「3ヵ月前まで」に、以上の申請を完了させていなければなりません。
電子帳簿保存法の運用を誤解して、申請がないまま帳簿を電子保存し、原本を廃棄してしまうと、後の税務調査や監査対応が困難になるので十分注意しましょう。
電子帳簿保存法によって認められている保存方法は3つあります。
①電磁的記録による保存
②マイクロフィルムによる保存
③スキャナ読み取りによる保存(スキャナ保存)
電磁的記録とは、DVDやCDといった記録媒体を使用し保存するものを指します。また、そうした外部記録媒体だけでなく、サーバ内に保存した会計システムデータも、電磁的記録として認められています。
マイクロフィルムとは歴史的な資料など、長期保存を要する重要な文書・図面、あるいは新聞などの原版汚れ・破損を予防する目的で用いられる記録媒体です。長期保存性に優れているため、永続的な保存が義務付けられている文書の保存に適しており、法的証拠性も認められています。
スキャナ読み取りによる保存は、紙文書をスキャンして電子データ化し、保存することを指します。電子帳簿保存法の中では、このスキャナ読み取りによる保存(スキャナ保存)が可能になったことが、企業にとって最も大きなメリットと言えます。
ただし、スキャナ読み取りでは改ざんも可能なことから、一定条件の元でスキャンした上で、タイムスタンプを押す必要があります。
企業が保存する契約書などの重要書類は、そのほとんどが紙文書によって保存されています。スキャナ読み取りによってそれらを電子データ化すれば、省スペースや管理コスト削減など、様々なメリットがあるでしょう。
しかし、スキャナ読み取りによって保存可能な文書は限られています。
≪スキャナ読み取りで保存可能な文書と、そうでない文書≫
スキャナ保存できる文書
契約書、領収書、預り証、借用証書、預金通帳、小切手、約束手形、有価証券受渡計算書、社債申込書、契約の申込書(定型的約款無し)、請求書、納品書、送り状、輸出証明書及びこれらの写し
スキャナ保存できない文書
仕訳帳、総勘定元帳、帳簿関係書類全般、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、決算関係書類全般
ここで注意しなければならないのが、仕訳帳、総勘定元帳、貸借対照表、損益計算書はスキャナ読み取りによる保存対象外となっているが、電磁的記録による保存は可能、ということです。
あくまでもスキャナ保存が認められないということであって、あらかじめ電磁的記録で作成され、承認を得ていれば、電子データでの保存は可能となります。
電子帳簿保存法に準拠するにあたって、多くの企業が心配することが「サーバが国外にある場合も電子帳簿保存法が適用されるのか?」という点です。
単刀直入にいえば、サーバが国外にあっても電子帳簿保存法は適用されます。ただし、条件が2つあります。
①保存場所が瞬時にデータを確認できる環境にあること
②電子帳簿保存法の真実性、可視性の要件を満たすためにバックアップが頻繁にできること
以上の条件を満たすことで、サーバが国外にある場合でも、電子帳簿保存法は適用されます。
電子帳簿保存法に準拠することで、企業は様々なメリットを得られます。ペーパーレス化によるコスト削減、会計帳簿業務の電子化・効率化、セキュリティの強化などは、多くの企業が望んでいるところでしょう。そのためには、まず電子帳簿保存法について正しく理解し、電子化できる文書の種類や、必要な手続きを知ることが大切です。
ここで紹介した電子帳簿保存法の概要はあくまで一部ですので、準拠する際には詳しく確認した上で、取り組みをご検討ください。
また、電子帳簿保存法に準拠したとしても、一定の紙文書はどうしても残ってしまうため、電子化した文書と紙文書の一元管理をどうするかが課題となります。ワンビシアーカイブズが提供する書類保管サービス「書庫探」は、過去に作成された紙の書類をお預かりし、必要な時にPDFで閲覧できるサービスを提供しています。書類管理の一元化、効率化を検討されているお客様は、ぜひご検討ください。
執筆者名 ブログ担当者
株式会社NXワンビシアーカイブズ
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