
経営資源としてのデータの価値向上やコンプライアンス問題などを背景として、データの保存期間が著しく長期化しています。データ永久保存時代などと言われるようになってからも、すでに数年が経過しました。
このような時代の中、多くの企業・団体ではデータを数年~数十年間確実に保存するための方法を模索・検討している実情があります。データを確実に長期保存するためには適切な保管環境の維持やメディアコンバートなどが必要であり、それなりの手間が伴うため担当者の悩みの種になることも多いでしょう。
しかし世の中には数十年どころか、数百年~数千年にわたって残り、今なお人々に情報を伝え続けている記録や媒体が実在します。そこで今回は数百年~数千年にわたって残っている情報記録媒体を紹介しながら、どうすればデータを長期保存できるのか、そのヒントを探ってみましょう。
ヒエログリフは紀元前3000年頃から紀元4世紀頃まで、形を変えながらエジプトで用いられていた文字です。石版などに刻まれていたため、ヒエログリフで記録された情報は現代までいくつも残っています。しかし長い歴史の中で読み方を知る者がいなくなってしまい、多くの学者による解読の試みが長く続くことになりました。
解読の転記となったのは18世紀末、フランス皇帝ナポレオンの遠征軍によるロゼッタストーンの発見でした。ロゼッタストーンにはヒエログリフを含む3種の書記法でほぼ同一の内容が記録されており、これがヒエログリフ解読の突破口となったのです。
石版という保存性に優れた媒体に記録されたことで、情報自体は失われることなく可用性が数千年にわたって保たれました。しかしヒエログリフを読める者がいなくなったことで、ロゼッタストーン発見までの数百年にわたって情報の見読性は失われることになりました。ヒエログリフを刻んだ石版を記録媒体、解読法(ロゼッタストーン)を媒体に対応するドライブやソフトウェアと考えると、データを保存するときに可用性と見読性を両立して維持することが、いかに大事であるか再認識できるのではないでしょうか。
世界最古の録音として有名なのは、1877年にエジソンが発明したアナログレコードに記録された音声です。アナログレコードの原理は現在も用いられているLPレコードと基本的に同じで、盤面に刻まれた溝が盤面を移動する針を振動させ、その振動を電気信号に変換して音声として出力されるというものです。
そして現存する世界最古の磁気音声記録とされているのが、1898年にデンマークのポールセンが発明した「鋼線式磁気録音機」を用いて、1900年に記録されたオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の音声です。鋼線式磁気録音機は後に登場する磁気テープ録音機と原理的には同じものでした。磁気テープの長期保存性の高さを窺い知ることができる事例といえるでしょう。
活版印刷といえば、15世紀にドイツのグーテンベルクによって発明されたといわれている活版印刷技術が有名です。同技術は、それまで数少ない写本のみ存在していた聖書を、より広く普及させるきっかけとなりました。
しかし木版による印刷技術はそれ以前から存在していました。そして制作年代が確認されている世界最古の印刷物は、実は日本にあります。それが770年に印刷された経文「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」です。http://www.ndl.go.jp/exhibit/50/html/catalog/c002.html (国立国会図書館HPより)
百万塔陀羅尼は奈良時代に、鎮護国家や戦死した将兵の慰霊を目的として100万巻が防虫加工された紙に印刷され、100万基の小塔(画像は上記リンク参照)に収められて、10万基ずつ10の寺院に分けて奉納されたものです。その大半は1000年以上の年月が経つ間に失われ、現在では法隆寺に4万数千基および個人、博物館所蔵となっている一部のみが残っています。
防虫加工された紙(長期保存に適した記録媒体)の使用、密閉された容器(小塔)での保管、目的は別だとしても多数の経文作成により冗長化がなされたことで、当時の文化と印刷技術に関する貴重な記録を残すことができたアーカイブの例といえるでしょう。
今回は百年~数千年にわたって残り続ける記録媒体を紹介しながら、データ保存に必要なことを探りました。可用性と見読性の維持、保存に適した媒体の選定や環境の用意、消失対策のための冗長化などが実現されることが、データや記録の保存に必要なことであり、現代のアーカイブにも通ずるということが見えたと思います。
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執筆者名 ブログ担当者
株式会社NXワンビシアーカイブズ
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