過去の知見を未来につなぐDX戦略。KHネオケムがAI-OCR&電子化で実現した技術資料活用
- 要約
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KHネオケム様は約400万枚の紙の技術資料を電子化し、AI-OCRで検索可能に。
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資料を探す時間が大幅短縮。さらにAIと共に価値創造を目指せる環境整備を着実に推進。
事業内容
KHネオケム株式会社様は、“「化学の力」で、よりよい明日を実現する。”という企業使命のもと活動する化学素材メーカーである。コア技術であるオキソ技術を中心に、様々な合成技術、品質管理技術、高純度化技術などを強みに、「冷凍機油原料」「化粧品原料」「電子材料」「基礎化学品」など、多様な産業に特長ある素材をグローバルに提供している。特に、環境に優しいエアコンに使用される特殊な潤滑油(冷凍機油)の原料においては世界トップシェアを誇る。
導入の背景
同社の四日市工場と千葉工場には、製造技術資料、製造設備の設計図、品質管理報告書、研究開発レポートなど、膨大な紙資料が保管されている。中には半世紀以上前の古い資料も存在し、過去の知見や技術が記載された貴重な資料となっている。これらの資料を活用できるよう整備するため、NXワンビシアーカイブズが提供するAI-OCR×BPOサービスを導入。紙の技術資料を電子化し、AI-OCR(SmartRead)の全文OCR処理でPDFにテキストを埋め込み、検索可能なPDFを作成した。資料の目次部分など、今後検索で利用する部分についてはNXワンビシアーカイブズのスタッフが読取結果の確認・補正を実施、ファイル名も一定のルールで付与して、どんなファイルかを素早く確認できるようにした。
2023年は、約15箱分の資料を「そのまんま電子化プラン」で電子化、AI-OCR処理し、2024年には既にPDF化されていた資料(約7,000件)のAI-OCR処理を実施。2025年には大規模な電子化として約200箱の処理を実施、2026年以降も計画的な実施を予定している。
同社が抱えていた最大の課題は、「工場内のどこに何の資料があるか把握できず、必要な情報を探すのに膨大な時間を要していたこと」だ。資料は工場内の複数の建屋や部屋に点在していた。一部の部署を対象に業務時間に関するアンケートを行ったところ、資料探索に概ね10〜20%の時間が割かれていることを確認した。
特に工場で問題が発生した際には、過去の知見をベースにタイムリーな対応が求められるが、必要な情報を探すのに時間がかかり迅速な課題解決に繋がらないケースもあった。また、技術開発やプロセス設計において、過去の知見をベースに検討計画を立てることがあるが、古い資料についてはその資料の存在すら知らない若手社員も多く、貴重な技術が十分に活用されないことがあった。
さらに、ベテラン社員の定年退職が進む中で、資料の所在を知る関係者も減少。技術の継承が困難になることへの危機感も高まっていた。これらの課題を解決し、過去の知見が蓄積された技術資料を活用できる環境を整備することが急務となっていた。
NXワンビシアーカイブズを選んだ理由
同社では当初、資料の電子化を自社で実施することも検討したが、人員や時間の制約、コスト面を考慮し、NXワンビシアーカイブズの活用を決定した。
選定にあたっては、セキュリティ面、AI-OCRの読み取り精度、コストを重視し、複数社と比較検討を実施。総合的なバランスを評価した結果、NXワンビシアーカイブズを選択した。導入の決め手となったのは、以下の4点である。
・セキュリティ面での信頼性
同社の技術資料は重要な機密情報を含むため、安心して任せられるパートナーを求めていた。導入前にNXワンビシアーカイブズの情報管理センターを見学し、「セキュリティ体制の厳格さ」と「現場スタッフの徹底した教育体制」を確認できたことが大きな安心材料となった。
AI-OCRの処理もクラウドではなくNXワンビシアーカイブズの安全なオンプレミス環境で対応が可能だった。
・提案型の伴走支援体制
導入前の段階から担当者が工場に足を運び、実際の資料を確認しながら、具体的な処理方法や想定される作業量について丁寧にヒアリングと提案を実施。同社の方針に寄り添った柔軟な提案を受けることができた。
業務を開始してからも資料箱詰め作業の負担軽減として「箱詰め代行プラン(NXワンビシアーカイブズのスタッフ3名が現場に赴き半日程度で箱詰めを完了)」を提案・実施するなど、現場の声に応じて迅速かつ柔軟に対応してくれた。
・コストパフォーマンス
コストパフォーマンスも重要な要素だった。他社と比較した際に、読み取り精度とコストのバランスが優れていたのも選定理由として大きかった。
・スピーディーな対応力
「約400万枚という膨大な紙資料を3年程度で集中的に処理したい」という希望に対し、スピーディーな対応が可能だったことも一つの要因となった。
導入にあたっては、いきなり大規模な投資を行うのではなく、まず小規模でスタートし、事例を積み上げて費用対効果を検証しながら進めるアプローチを採用。この方針に対しても柔軟な提案を受けることができた。
導入後の社内の効果・感想
AI-OCRによってサーチャブルPDFを作成したことで、必要な時間を検索する時間が大幅に削減された。これまでは資料そのものの所在を探すことから始める必要があったが、現在はPCがあればGoogle検索のようにキーワードで簡単に必要な情報を引き出せるようになった。こうした電子化の基盤整備により、AI活用にもつながる環境が段階的に整備されている。
その結果、技術者が資料探索に費やしていた時間を、実験業務など本来注力すべき業務に振り向けやすくなるなど、業務の進め方に良い変化が生まれ始めている。
業務効率化だけでなく、新たな価値創造にもつながっている。技術開発やプロセス設計など長期間を要する業務では、過去の事例を参照することで、検討の進め方を工夫しやすくなり、結果として開発期間の短縮や効率的な実施が可能になってきている。
例えば、過去の実験データを電子化された資料から確認することで、本来であれば2週間〜1ヶ月程度要する工程を省略し、過去の知見を基に新しいアプローチで進めることが可能になった事例もある。
また、成功事例は共有されやすい一方、失敗事例は伝わりづらい。今回の電子化によって、従来は参照しづらかった事例も検索・参照できるようになり、過去の失敗を繰り返しにくい環境が整った。こうした蓄積を基に、新しい実験計画の立案や発想の広がりが生まれやすくなり、将来的な価値創造の基盤づくりにも寄与している。
また、生成AIの活用に関しても社内整備が進み、電子化された技術資料をAIで分析することで、さらなる活用の広がりが期待されている。
DX推進への期待/展望
今後は、DX戦略の一環として、AI技術を活用した業務効率化や新しい価値創造をさらに推進していく方針である。これまで蓄積してきた社内の無形資産である約400万枚の資料について、電子化を進めることで、日々の業務の効率化やナレッジの把握・活用がしやすくなってきている。今後も電子化とAI活用の取り組みを継続していく予定だ。
また、情報活用の在り方も変化しつつある。従来は人が自ら情報を探して使うことが中心だったが、これからは生成AIを介して情報を取得・再構成することが一般的になり、AIエージェントが情報を活かして価値創出に寄与する場面が増えていくと考えられる。価値創出の難易度が高まる一方、人とAIが協働し、新しい価値を生み出しやすくなってきている。
当社としても、AIと共に情報を活用し新たな価値を創出できる組織を目指し、社内に眠る有益な情報を引き出せる環境づくりを重要な施策として位置づけている。紙の利便性とデジタルの利点を両立させながら、技術伝承と人手不足への対応、そして新たな価値創造に繋がる基盤づくりを着実に実現していく。
企業概要
化学素材メーカー
本社:東京都中央区日本橋室町2-3-1
設立:2010年12月
URL:https://www.khneochem.co.jp/
取材協力:
KHネオケム株式会社
知的財産部 課長補佐 小倉 陽祐 様
※役職はインタビュー当時

