作業期間を7年から3年半に大幅短縮。40年分の図面資料を電子化しAI-OCRで部品情報をデータベース化
- 要約
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住友重機械搬送システムは全国8拠点に散在する40年分の図面資料(3,000ファイル)の電子化とAI-OCR処理を実施し、部品情報をデータベース化。
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部品情報が可視化され、生産中止部品のラストバイ対応が劇的に改善した。
事業内容
住友重機械搬送システムは、搬送システム・物流システム・パーキングシステムの3つの事業を軸とし、モノを動かすスペシャリストとしてあらゆる産業分野におけるソリューション活動を展開している。物流システム事業は物流・クリーン環境・食品工場向けの自動倉庫・高密度保管自動倉庫(マジックラック)や無人搬送車(AGV)の設計製造保守を行っている。
導入の背景
●図面管理における課題
物流システム事業は、40年以上の設備納入実績がある。その長い歴史の中で、膨大な図面資料が蓄積されていた。これらの図面資料には各設備で使用されている部品情報が記載されており、保守業務において重要な役割を果たしている。
しかし、同社の各拠点では、膨大な図面を紙資料としてバインダーで管理していた。アナログからデジタルへの過渡期でもあったため、一部は紙とデータが混在状態にあった。そのため図面検索に数時間から1週間ほどかかることも珍しくなく、本社が全国の顧客情報を確認する際には、「各拠点に依頼→PDF化→メールで送付してもらう」という非効率な業務フローとなっていた。また、緊急時に必要な図面が手元にないという問題も発生し、業務スピードを大きく阻害していた。
●「顧客カルテ」プロジェクトの始動
こうした状況を打開するため、2020年から「顧客カルテ」プロジェクトの構想が始まり、顧客の設備情報から担当者情報、部品情報までを統合管理するデータベースを自社で構築。2022年から本格運用を開始した。 データベース化を進める中で、部品点数は約2万点に及ぶことが判明し、この膨大な部品情報を正確に把握することが必要になった。
●ラストバイ情報の迅速な提供
部品表の情報を部品管理システムへ登録することで、在庫切れの部品や生産終了間近の部品および該当部品を使っている設備を正確に把握し、顧客にスピーディな情報提供をすることが可能になる。これにより顧客がラストバイ(生産終了前の最終購入)等を検討する時間を十分に確保できるようにしたいと考えていた。 特にコロナ禍においては深刻で、月2〜3件もの生産中止情報が入るようになった。部品の代替品がない場合、設備が半年停止する可能性もあり、ラストバイ情報を迅速かつ正確に提供できなければ、顧客との信頼関係にも影響を及ぼしかねない状況となっていた。
導入した理由
部品情報のデータベース化に向けて、当初は派遣社員(4名)が部品表から目視で情報を確認し、システムへ手入力する作業を進めていた。しかし、対象となる図面資料は3,000ファイル。作業完了までに7年かかる見込みだった。上層部からは「7年では遅すぎる」という指摘があり、抜本的な解決策が求められた。
手入力には品質面での課題もあった。担当者には、設備や部品に関する専門知識がない。そのため型式と仕様を混同して入力したり、タイピングミスが発生したりと、誤入力が続出していた。正確な部品情報が求められるデータベースにおいて、この問題は看過できないものであった。
AI-OCRツールの自社導入も検討したが、部品表のレイアウトが定型化されていないことが障壁となった。各資料は罫線幅が異なっていたり、項目や配置が統一されていなかったり、古い資料では手書き記載も存在していたりしたため、読み取り精度に不安があった。
NXワンビシアーカイブズを選んだ理由
NXワンビシアーカイブズのサービスが求める要件を満たしていることが明確であったため、比較検討は最小限の1社のみにとどめ、早急に導入を決定。導入判断の決め手となったのは、トライアル期間での読み取り精度検証だ。あえて「最も字が汚い部品表」でテストを依頼したところ、問題なくデータ化することができたため、安心して処理を依頼できた。 また、一気通貫のサービス提供体制や柔軟な業務設計も選定理由となった。
●高精度のAI-OCR技術、確認・補正対応
表出力AI-OCRの採用により、非定型レイアウトへの対応が可能となった。罫線幅の違い、項目配置の相違、さらには手書き資料でも高精度な読み取りを実現できることが、トライアルで実証された。また、AI-OCRは高い読取率を誇るものの100%にはならない。そのためスタッフによる読取データの確認・補正作業まで実施してもらえる点は非常にありがたかった。一気通貫のサービス提供体制
紙資料の電子化からデータ化、加工まで全工程を委託できる包括的なソリューションは、他社にはない強みであった。「バインダーの図面集をPDF化→図面集から部品表を抽出→AI-OCR処理→部品マスタとの照合→読取結果確認・補正→部品データ一覧生成」という一連の作業を、各拠点からの資料集約も含めて任せられることは、大きな安心材料となった。
●柔軟な業務設計、解決策提案
トライアル期間(2022年2-6月)において、要望をすり合わせながら最適なフロー・仕様を設計してもらった。補正対象項目を絞り込み、部品マスタとの照合を実施することで、委託費用を抑えつつ、自社側のデータ検証負担も軽減するという両立が実現した。NXワンビシアーカイブズの担当者は、統一感のない部品表も理解しようと努め、打合せの度に課題に対する解決策・代案を積極的に提案。契約、納品までのプロセスも丁寧かつ確実に進めてくれた。
導入後の社内の効果・感想
まずは2022年9月から2023年3月に2拠点(30箱・500件)の処理を実施し、その後、2023年9月から2024年12月にかけて6拠点(60箱・2,200件)へと展開した。
NXワンビシアーカイブズのAI-OCR×BPOサービスの導入により、データベース完成までの期間を7年の見込みから3年半へと大幅に短縮することができた。手入力の担当人員が不要なため、人件費は数千万円分を削減。投資額に対して、十分な効果が得られた。
主な効果として3つあげられる。
●在庫管理の適正化
全社での部品使用数が可視化されたことで、使用頻度に応じた適正な在庫配置が可能になった。これまでは各拠点の担当者が感覚的に在庫数を決めていたが、データに基づく判断へと変化した。
●リモートアクセスによる業務効率化
図面のリモート参照が可能になり、現場ではiPhoneなどのモバイル端末で確認できるようになった。これまで紙をコピーして持ち歩き、トラブル時に図面がないという事態に直面していたが、そうした問題は解消された。各拠点への検索依頼も減少した。
●ラストバイ対応の改善、受注への貢献
最も劇的な改善が見られたのは、ラストバイ対応である。網羅性、正確性、レスポンススピードのすべてが大幅に向上した。 これまでは本社からサービスエンジニア(60名)に生産中止情報を流し、各担当者が図面をひっくり返して確認するという属人的な対応であった。データベース化により、本社で生産中止部品の一覧を作成し、顧客・工場・倉庫それぞれの単位で即座に検索して該当部品と使用数を特定できるようになったため、全顧客への確実な情報提供が可能になった。 営業活動への貢献も大きい。生産中止部品を軸とした提案営業が可能になり、顧客との接点の強化にもつながった。これにより受注は右肩上がりで推移している。
今後は、「手書きの作業報告書(日報)」のデータ化を検討している。 これを顧客カルテと紐付けることで、さらなるサービス力強化と営業への活用を目指している。また、本社では積極的に活用が進んでいる「顧客カルテ」を、各拠点のサービスエンジニアにも浸透させるための布教活動を推進し、全社での活用拡大を図っていく方針である。
企業概要
製造業
本社:東京都品川区西品川1-1-1
設立:1978年4月
URL:https://shi-mh.co.jp/
取材協力:
住友重機械搬送システム株式会社
物流パーキング統括部 サービス部 サービスエンジニアリングG
井上 健一 様
※役職はインタビュー当時
