電子署名と契約書の関係についての解説

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2016年9月26日に「働き方改革実現会議(安倍総理の私的諮問機関)」が発足してから、「働き方改革」という言葉が世間に浸透し、各企業でも様々な施策が取り組まれています。その中で急速に普及したものがあります。それが「電子契約」です。

これまで紙の文書で取り交わされてきた契約業務を、文字通り電子化するという取り組みです。電子契約によって手続きに時間がかかっていた契約プロセスを大幅に短縮し、ペーパーレス化を推進することで、印刷コストや印紙代を削減できるというメリットがあります。

今回解説するのは、そんな電子契約に欠かせない「電子署名」についてです。電子署名とは何か?なぜ電子契約に必要なのか?など、電子署名の役割について説明します。

電子署名法とは?

電子署名を理解するにあたってまず重要なのが「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」の存在です。これは2001年(平成13年)4月1日に施行された法令で、電子署名の法的効力を定め、電子データ上の署名が紙への押印やサインと同じように通用するための基盤を整えました。

従来のビジネスシーンでは、紙の契約書で契約が取り交わされるのが基本でした。紙であれば記載された内容の改ざんが難しいことや、押印やサインにより本人が承認したものと容易に推定できるため、書類現物への押印やサインによって証明するのが当たり前でした。これに関しては民事訴訟法第228条に次のように規定されています。

"紙に記載され、押印もしくは、署名された文書等(契約書等の文書、議事録等等)は、真正に成立すると推定される"

こちらの「電子署名法」についてもご覧ください。

これが電子署名法によりどう変化したのか?法務省ホームページでは、電子署名法について次のように説明しています。

  • 本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は、真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定されます
  • 電子署名法の施行により、認証業務のうち一定の基準を満たすものは総務大臣、経済産業大臣及び法務大臣の認定を受けることができる制度が導入されました
  • この認定制度の導入にあたって、総務省、経済産業省及び法務省は、認定の際に申請のあった認証業務に用いられる設備等を実地に調査する業務を行う指定調査機関を指定しました

出典:法務省 電子署名法の概要と認定制度について

電子署名法が施行された当時は、電子契約はまだまだ普及の「ふ」の字も無いほどでした。一般家庭にもパソコンとインターネットが普及するほど情報基盤は整えられていましたが、やはり紙文書でのやり取りの方が信用性が高いと考えられていたのです。

しかし最近になり、働き方改革に注目が集まるようになってから各企業のIT技術の活用もより活発になり、ペーパーレス化が浸透し始め、文書の電子的なやり取りが増えたことで、電子契約へのニーズが爆発的に大きくなりました。

電子署名法における電子署名の定義

電子署名法は次のような章・条立てにて構成されています。

≪電子署名法≫

章 条

第1章 総則 第1条・第2条

第2章 電磁的記録の真正な成立の推定 第3条

第3章 特定認証業務の認定等 第4条―第16条

第4章 指定調査機関等 第17条―第32条

第5章 雑則 第33条―第40条

第6章 罰則 第41条―第47条

このうちの 第1章 総則 第2条に次のような規定があります。

"第2条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

  1. 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
  2. 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

この第2条では電子署名の要件について述べており、1号は本人性を、2号では非改ざん性を要件としています。つまり電子署名とは「電子的な文章に対して、本人が署名を行ったことを示し、改ざんされていないことを確認できる措置」が施されていれば、成立するということです。

気になるのは、ここではあえて特定の技術を指して「電子署名」とはしてないところであり、非常に曖昧な定義となっています。一般的な電子署名では「電子証明書」と「タイムスタンプ」を併せて用いることで証明が行われます。これらは本人の確認性と非改ざん性の証明をするための技術です。

特定の技術に触れていない理由としては、弁護士であり近畿大学・関西大学兼任講師の岡本久道氏の「電子署名法の解説」では次のように説明されています。

"従来における電子署名技術の中心は、前述のとおり公開鍵暗号技術であった。しかし今回の法律では、今後の技術発展により新たな技術が実用化された場合でも、これを「電子署名」として法律上で扱えるよう、公開鍵暗号技術に限定しないという見地から、「技術的中立性(technological neutrality)」を保って電子署名が果たすべき機能という観点から定義されている。したがって、指紋などを利用したバイオメトリックス技術に基づく電子署名も、この法律にいう電子署名に該当しうる。"

つまり、電子署名を成立されるためのより良い技術が将来的に開発される可能性があるため、特定の技術を指すことなく、こうした曖昧さを含んでいると考えられます。

電子署名の技術

最後に、電子署名を成立させるための技術である「電子証明書」と「タイムスタンプ」について説明します。

電子証明書とは、指定認証局が発行する証明書であり、「この電子署名は実在する人物が署名した正式なものである」ということを証明します。電子データによる契約書等を受信した当事者は、電子署名と電子証明書の一致を確認することで、それが偽装や改ざんされていないことを確認できます。

タイムスタンプとは、電子署名と並行して、電子データによる契約書等に付与する「スタンプ」です。付与時刻が記されており、その役割として以下の2点が挙げられます。

  1. タイムスタンプが押された時刻に、当該文書が存在していることを証明する(存在証明)
  2. タイムスタンプが押された時刻以降に、当該文書が改ざんされていないことを証明する(非改ざん証明)

電子データとして作成した契約書や請求書には、電子署名だけでなくタイムスタンプを付与し、かつ電子証明書が発行されてはじめて効力を発揮します。

電子署名での電子証明書とタイムスタンプ」について分かりやすくご説明もご参考にしてください。

電子契約を推進することで、企業は様々なメリットを享受できます。電子署名について理解できたら、次の段階として電子契約の導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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