古文書を読む(2)― 江戸時代の「戸籍」から近代の戸籍へ ―

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1.江戸時代の「戸籍」

江戸時代は、現行戸籍のように一組の夫婦と姓を同じくする未婚の子を単位につくられておらず、そもそも戸籍という形で人々が把握されていませんでした。

江戸時代に生きた人々はその時代特有の「戸籍」で人別が把握されていました。本記事では、江戸時代の「戸籍」に類する資料を中心に紹介しながら、明治・大正期の戸籍までみていきます。

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2.武士の「戸籍」

江戸時代は身分制の社会でしたので、それぞれの身分や集団内で戸籍に類する資料が作成されていました。

武士層には、藩主など殿様から家臣へ知行や役職が付与されたことを記した「分限帳(ぶげんちょう)」や、江戸幕府の幕臣が自身の昇進や移動の際に、経歴や職務内容を記して提出した「明細短冊(めいさいたんざく)」などが戸籍に類するものといえます。

また武士は、みずからの家や親類・一族の歴史や由緒を誇示する必要からないしは、子孫にむけて伝える意図をもって、多くの家では「先祖書」や「親類・遠類書」を作成します。こうした資料も武士の「戸籍」に類するものといえるでしょう。

3.村の「戸籍」

江戸時代、全国の村の百姓達は檀家制度(だんかせいど)や五人組制度(ごにんぐみせいど)のもと、家ごとの宗門や人別を把握するために「宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)」を作成していました。

宗門人別改帳は、はじめに家長の名とその年齢、宗派と檀那寺(だんなでら)が記載され、以下家族の名が続きます。宗門人別帳は部屋住み(家を継がない当主の次男・三男など)の百姓とその家族も名を連ねるので現代の戸籍とは違いますが、戸籍の機能を果たす資料といえます。

下記の【写真1】と【写真2】は、幕末から明治初めにかけて存在したある村で生活する保次郎と妻「とみ」の家族の記載がある「宗門人別改帳」と、明治はじめ頃の「戸籍簿下書」の一部になります。

両写真を見比べると、一見記載は似ていますが明治はじめの戸籍簿には、

①屋敷の地番記載があること、

②生業の情報(「商」)記載があること、

③妻方の実家に関する記載があること、

④氏神の記載があること

など、徐々に現代の戸籍に繋がる情報が入っていることがわかります。

一方、宗門人別改帳には、冒頭に「□□宗〇〇町△△寺檀那」というように保次郎の家族の宗派と檀那寺が明記されています。両資料を見比べると、改めて宗門人別改帳が江戸時代の「戸籍」とも言い得る資料であることがわかります。

【写真1】「宗門人別改帳」(部分)

【写真2】「戸籍簿下書」(部分)

4.寺の「戸籍」

江戸時代から現代にわたって存続するお寺にも戸籍に類する資料が存在しました。一般的に「過去帳(かこちょう)」と呼ばれる資料で、過去帳にはお寺に所属していた故人の戒名や俗名、死亡年月日などが記録されており、過去帳によっては、個人の住居のあった字名の記載がありました。

あくまで故人の情報を記録した帳簿ではありますが、人名や生没年月日、居住地域の記載があるなど、戸籍に近い情報を有していた資料といえます。

5.移動に伴う身分証 

また、江戸時代は現代のように国内を容易に動き回ることは出来ず、村を越えてあるいは他国・他領を越えて巡礼や商用目的で行く際には、檀那寺や村役人から交付された往来手形(おうらいてがた)や送り状を携帯して移動していました。

これは通行するための身分保証書的な書付で、現代のパスポートに近いものです。往来手形や送り状には、所持する者の居住村や名前、同行者の名前が記載され、戸籍情報の一部が記載される資料といえます。

6.明治・大正期の戸籍

江戸時代が終わりをむかえ明治時代に入ると、現代の戸籍の原型となる戸籍が作成されます。

はじめは、明治2(1869)に作成が命じられたいわゆる明治2年式戸籍です。この戸籍は、作成時期が明治2年から4年と短くまた、全国一律に作成されたとはいえず、限定的に作成された戸籍でした。

続いて明治5年に作成された戸籍は全国一律に「戸」(屋敷)を単位に作成されたもので、一般的に明治5年式戸籍あるいは、この年の干支である壬申を付して壬申戸籍(じんしんこせき)と呼ばれるものでした。

明治5年式戸籍は戸長の管理のもと、明治初年段階における全国の戸別の住民の家族構成やその人数、年齢が把握できる資料でしたが、江戸時代以来の旧身分(元穢多、元非人など被差別身分呼称)の記載が一部にあり、そのことが戦後問題となり、現在は法務局の管理の下、厳重保管となり閲覧することができなくなっています。

その後、明治から大正期にかけては明治19年(明治19年式戸籍)と同31年(明治31年式戸籍)、大正4年(大正4年式戸籍)に戸籍の改定変更がなされます。

それぞれ年式ごとに様式や項目の違いはあるのですが、明治19年式戸籍以降、現在の平成6年式戸籍で横書きに変わるまでは、全て縦書きで大きく2段組みの構成で書式が固定化されました。上段には、戸籍記載人物の出身地や入籍年などが記載され、下段には戸主以下の人名と出生年月日や続柄、父母名の記載がありました。明治から大正期にかけて戸籍は、書式・様式共に改変・整備されていきました。

7.「戸籍」及び戸籍の資料としての重要性

ここまで、江戸時代に各身分階層や集団ごとに作成された戸籍に類する資料について紹介してきました。

それぞれの身分階層のうち、人口的に多くを占めた百姓に関しては宗門人別改帳が近代以降の戸籍に繋がる資料であったことがわかります。そして明治の時代に入ると、これまでの宗門(宗派)と人別の把握から、各戸別の地番と構成員、その来歴を把握する戸籍が成立したことが明らかになったかと思います。

江戸時代から連綿と続いた「戸籍」そして近代以降現代につながる戸籍は、人々の帰属や身分証明、出自を明らかにする資料として、今後もその重要性は変わりありません。

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執筆者名プロフィール

執筆者名 中谷正克

株式会社NXワンビシアーカイブズ 

国立公文書館認証アーキビスト

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