2018年 電子帳簿保存法の改正点概要

  • 文書管理・記録管理
  • 電子帳簿保存法

「電子帳簿保存法」とは1998年に制定された法律です。それまで紙の原本での保存が義務付けられていた国税関係書類、契約書類、領収書などを電子データとして保存することが初めて認められました。2005年には一部内容が緩和され、書類のスキャンによる電子データ保存も認められるようになっています。

現在も、この電子帳簿保存法は改正が続けられており、2016年と2018年の大きな改正によって、法令適用がより現実的になり、いよいよ電子データ保存をはじめる企業が続々と登場しています。

本稿では、この電子帳簿保存法の改正点についてご紹介していきます。

電子帳簿保存法の改正で変わった5つの大きなこと

1.スキャナ保存要件の緩和

電子帳簿保存法では2005年から紙の書類をスキャンして電子データ化するスキャナ保存が認められていますが、当時は電子データ化に使用できるスキャナは、原稿台と一体になっているものに限定され、デジタルカメラやハンドスキャナによるスキャンは認められていませんでした。

近年では、スマートフォンのカメラ性能が大幅に向上したことにより、2018年からスマートフォンなどカメラ撮影による電子データ化が認められるようになっています。これより、外出先でも領収書などをその場で電子データ化することが可能です。

ちなみにスキャナ保存が認められている書類は以下に限定されています。

契約書、領収書、預り証、借用証書、預金通帳、小切手、約束手形、有価証券受渡計算書、社債申込書、契約の申込書(定型的約款無し)、請求書、納品書、送り状、輸出証明書及びこれらの写し

2.原本の廃棄が可能に

国税関係書類は法律によって7年間、紙の原本を保存しなければいけないという規定があります。これによって経理担当者は膨大な書類を仕分け、ファイリングして管理しなければいけません。さらに、事業規模が大きくなるにつれて書類の量も多くなるため、大企業においては書類を保存するためのオフィススペースを確保したり、外部倉庫を借りているケースもあります

1998年に電子帳簿保存法が施行されてからも、電子データ化しても原本を7年間保存する必要がありました。しかし2018年の改正により、電子データ化した書類に関しては原本を破棄してもよいことになりました。

従って膨大な書類のファイリング作業などは必要無くなり、電子データとして管理することで整理・管理・共有も行いやすくなっています。経理担当者の業務量が軽減されれば、繁忙期にリソースを最大限投入することができますし、印刷代の削減にもなります。

3.領収書上限金額の撤廃

2016年の法改正までは、電子データとして保存して良い契約書・領収書などは取引金額が3万円までという上限規定がありました。そのため、スキャナ保存を適用しても取引金額が3万円を超える場合は、従来通り紙での保存が必要とされていました。

一方、改正後はそれまでの3万円という上限が撤廃され、金額に関係なく電子データとして保存することが認められています。これにより、処理方法を統一することができます。現在は、帳簿と決算関係書類を除くすべての国税関係書類のスキャナ保存が認められています。

4.データ内の制約の緩和

電子帳簿保存法ではスキャナ保存した電子データにいくつかの制約があります。

まず、電子データはカラーで画質は200dpiまたは388万画素以上、スキャナ保存した書類の元の大きさを判別するために、画像サイズのデータも保存する必要がありました。さらに、電子データは紙媒体の書類よりも改ざんが容易なので、改ざんが行われていないことを証明する必要性があります(非改ざん性の証明)。

これを証明するための仕組みが「電子署名」と「タイムスタンプ」です。電子署名は誰が作成したかを証明するために、暗号鍵などを含めて書類に付与します。タイムスタンプはいつ作成したかを説明するもので、認証局を利用する必要があるため電子署名と合わせてコストがかかります。

2016年の改正以前は電子署名とタイムスタンプの両方が必要でしたが、改正後はタイムスタンプだけ付与されていれば良いことになりました。従って、スキャナ保存にあたっての手間とコストが大幅に減少しています。

ただし、受領者や書類作成者本人がスキャンしてデータ化する場合は、書類原本に署名し3日以内にタイムスタンプを押さなければいけないという規定があります。

さらに、2018年の改正によってグレースケール(白黒)でのスキャナ保存も認められるようになり、レシートや領収書などA4サイズ以下の書類に関しては、画像サイズのデータを保存する必要がなくなりました。

5.小規模企業者特例の制定

電子帳簿保存法を適用するには、改ざんが行われないように下記3点にもとづいて事務処理が行われるように社内規程を整備する必要があります。

  • 相互けんせい
    書類のスキャンと記録内容の確認を、それぞれ別の人が行う
  • 定期的な検査
    事務処理が適正に行われているかを確認するための定期的検査(1年に最低1回以上)
  • 再発防止策
    検査によって問題点が生じた場合に、報告と原因の究明、それと改善が行われること

これらの規程を整備するためには人員が必要なので、従業員が少ない企業では電子帳簿法の適用が困難になっていました。しかし、2018年の改正により従業者数が20人以下(サービス業、商業の場合は5人以下)の小規模事業者の特例として、定期的な検査を税理士に委託することができるようになりました。さらに、税理士に委託した場合は、相互けんせいが不要になります。

この改正によって、個人事業主や小規模事業者でも電子帳簿保存法を適用しやすくなったのです。

電子帳簿保存法を適用するには?

では、電子帳簿保存法を適用するためには具体的にどういったアクションが必要になるのでしょうか?最初のステップは、電子保存を開始する日の3ヵ月前までに税務署に対して、以下の書類を提出することです。

  • 国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書
  • 承認を受けようとする国税関係書類の保存を行う電子計算機処理システムの概要を記載した書類、および契約書
  • 承認を受けようとする国税関係書類の保存を行う電子計算機処理に関する事務手続きの概要を明らかにした書類
  • 申請書の記載事項を保管するために必要となる書類その他の参考となるべき書類

申請後、電子保存開始希望日までに税務署から連絡がない場合は「みなし承認」となり、電子データでの保存を開始することができます。次のステップは、電子帳簿保存法に対応している会計ソフトの導入です。

法改正によってスマートフォンカメラの撮影による電子データ保存が可能になりましたが、撮影した領収書等にはタイムスタンプを付与する必要があります。これを背景に、今まで経費精算を電子化するソフトウェアを提供していた事業者の多くが、タイムスタンプ局と連携し、スマートフォンカメラで撮影した領収書等に自動でタイムスタンプを付与し、電子保存を可能にした機能を展開しています。

まとめ

いかがでしょうか。電子帳簿保存法の適用を目指す場合は、会計ソフトや電子データ化のための装置、適切な保管サービスなど、各種関連ツールやサービスを有効活用することをおすすめします。

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