
平成の後半から令和の現在にかけて、企業や地方公共団体をはじめ広く一般家庭においても、「ペーパーレス」化がすすんでいます。ペーパーレス化の手段としては、これまで残されてきた紙文書を廃棄するとともに、紙文書を電子化し媒体変換することや(電子化文書)、そもそも紙に文書を残さず電子で文書を作成する(電子文書)ことなどがあります。
その一方で、現物(オリジナル)の良さ・重要性も再認識され、現代社会において文書を取り巻く環境は、電子(化文書含め)文書に席巻されつつも、紙文書の世界も引き続き残るという併存した状況になっています。
そこで今回は、江戸時代の紙文書の保管と維持管理についてご紹介。
現代においても記録媒体問わず文書の保管と管理は重要な検討課題ですが、江戸時代の人びとはどのように文書を保管し、維持・管理していたのかを見ながら現代課題の解決のヒントになる道を探したいと思います。江戸時代は、武士や商人、百姓、住職・神官などさまざまな階層の人々が公的な文書を作成し、自らの手であるいは集団で文書を保管する蔵を建設し、文書を保管していました。蔵自体は、当時「書物蔵」や「宝物蔵」、「文庫蔵」、「帳蔵」、「郷蔵」(ごうぐら)などと呼ばれ、規模や収納量は異なりますが、それぞれ厳重な管理がされていたことがこれまでの研究で明らかになっています。
大名が城内に建てた書物蔵などでは、書物方役人や蔵役人らによって文書が収納・蓄積され維持管理がなされてきました。
一方、村で文書を管理する場合は、村内に文書蔵や帳蔵を建てて文書を保管していました。村方の文書蔵・帳蔵には蔵番人が置かれることが多く、村内の百姓が交代で番人を務めるなど村の公的文書は百姓総員で維持管理するものと共通認識がもたれていました。公的文書とは異なり、私的な文書は家の敷地内で管理されてきました。私的な文書の保管や管理は、歴代の家の当主の教養や趣味嗜好によって文書量や文書の性格も様々で、多くの日記や私的な記録を残した家などは、自身の屋敷地内に文書保管専用の蔵を作るなどの例もありました。場合によっては文書蔵を増やして私的な文書の保管を維持する家もありました。
江戸時代は、身分階層問わず蔵による文書の保管が主流でありました。では、実際の文書はどのように収納されていたのでしょう。
蔵の内部は、基本的に日常の業務を書き留める文書や、日々頻繁に書き記す日記などの文書は書物棚や書物箪笥などに収納され、すぐに取り出せる形で保管されていました。そのほか、文書によっては、衣料品や調度品などを本来収納する長持を文書収納箱に代用したり、茶箱や行李に文書を収納することもありました。
文書蔵には、絵画や絵図などの大型資料を軸装にして同じく保管することも多く、軸装資料は、棚だけではなく、吊るして保管するなど空間を有効活用するなど保管に際して工夫がなされていました。
文書蔵に保管された文書は、文書を長期にわたって保管し続けるため、一年に一回程度梅雨明けのタイミングで「虫干し」と呼ばれる外気あてを実施していました。この虫干し行為は、文書に帯びる湿気やカビの除去を目的に実施された行為ですが、この機会に文書が蔵や箱から日の目をみるので、文書の保管者達が、先祖や自らが残してきた文書の数々を実際に確認できるという場になりました。
ここで江戸時代ではないですが、平成に入っておこなわれた文書虫干しの実際の様子を少しご紹介しましょう。
【写真1:資料取り出し後の文書箱】

【写真1】は、虫干しのために文書が取り出された後の文書箱の内部です。虫干しの際は、文書全てを取り出します。
【写真2:文書虫干しの様子】

【写真2】は、文書を実際に虫干ししている様子です。虫干しに立ち会った方たち総出で文書箱から文書を取り出し、一点ずつ文書を並べて虫干しします。文書によっては、大型の絵図もあり、絵図についても実際に広げて並べます。このように江戸時代においても文書を一点ずつ虫干して、文書の保存と維持管理を行っていたものと思われます。
【写真3:参加者一同による封印】

最後の【写真3】は、虫干し終了後に作業に参加した者全員で、元の箱に戻す際に封印をしたものです。村方文書の虫干し作業は、数人で行うのではなく、大人数で行い終了後は立ち合いの証明として参加者全員の氏名記入と押印がされました。
虫干し作業についてご紹介しましたが、文書を取り出して虫干しするためにはそもそも何の文書が箱に収納されていたのかわからないと文書の突合作業ができません。虫干し作業の必要上からも、文書管理上からも江戸時代には「書物改帳」や「書物目録」などの目録が作られます。こうした帳簿は、文書が年々増えていったりあるいは減っていったりするため、定期的に再作成されることとなります。
江戸時代において、文書は現代と同様に適切に保管されるとともに、閲覧や借用など利用が行われます。共有の文書を利用する際は、閲覧日や文書の借用日・返却日などが先にあげた「書物改帳」や「書物目録」に記録されます。
村の共有文書などの「書物目録」などは、村の役職交代などに伴って、所有者が変わることもありました。その際には、前任者から後任者へ「引継目録」が渡され、文書保管と管理の継続がはかられます。江戸時代の文書は、文書によっては祭礼の際に江戸時代の土地台帳である検地帳などが祭られる対象となる事例も報告されるなど、文書が神格化・宝物化されることもありました。
現代においても公文書などでは、文書の重要性によって一年保管と永年保管などのように文書保存に差をつけていますが、江戸時代の文書の一部はさらに重要度の度合いを越えたある種の神格性を帯びる場合もありました。それだけ江戸時代の人びとは、文書それ自体に記載内容の重要性とともに、替えのきかないモノとしての価値を与えていたともいえるでしょう。ここまで、江戸時代の文書の保管と維持・管理について紹介してきました。現代社会は、紙文書は極端に少なくなり、「ペーパーレス」が一層進み、電子文書の保管と管理が主たる検討課題となっています。記録媒体としては全く異なりますが、紙文書であっても電子文書であっても「文書」であることに変わりありません。
そうした観点に立った時に、江戸時代における人々の文書の保管や維持管理に対する日々の活動や文書意識は、現代の文書保管や管理に対して何らかのヒントになるのではないでしょうか。
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執筆者名 中谷 正克
株式会社NXワンビシアーカイブズ
国立公文書館認証アーキビスト
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