
2020年も残すところわずかとなりました。年末と言えば、大掃除の時期ですね。大掃除は書類を整頓するチャンスです。文書を使いやすく整え、だれでもすぐに必要な文書を見つけられるおすすめ方法についてご紹介します。
前回のブログでは、書類・文書管理の基本は「整理・整頓」であること。そして、まずは、不要なものを捨てる「整理」から取り組んでみましょう、ということをお伝えしました。
1年前には想像もしなかった様々な変化のあった2020年ですが、ぜひ、オフィスのキャビネットや机周りもしっかり整理して、気持ち良くスッキリと、新しい年を迎えてくださいね!
さて今回は、キャビネットに残った必要な文書を、使いやすく整える「整頓」について、お話していきたいと思います。「紙文書」を中心にお話していきますが、最近の業務では紙文書以上に身近になっている「電子文書(デジタルで作成・発生する文書)」についても、後ほど、少し触れていきますね。
さて、文書の「整頓」というと、どんなことを考えますか?
クリアファイルやバインダーなど、紙を束ねる道具(ファイリング用品)を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
ファイリング用品は、文書の整頓に欠かせない大切な道具ですね。
では、その後はどうしましょうか?とりあえず文書をバインダーに綴じて、「〇〇関係」とタイトルを付け、キャビネットに収納して、整頓おしまい!と、終わらせていませんか?
確かに目の前にあった文書は、見た目はきれいに片付きます。でもそれは、文書の「使いやすさ」や「探しやすさ」を意識した「整頓」になっているでしょうか?
オフィスにおける書類・文書管理で大切なことは「誰でも、必要なときに、必要な文書を、すぐに使う(見つける)ことができる」状態を保つことです。
その中でも、特に大切なのは「誰でも」という点です。担当者だけや、自分だけではなく、なぜ、「誰でも」でないといけないのか、その理由を一緒に考えてみましょう。
仕事をする中で、「担当者が不在でわからない」ということは、度々ありますよね。担当者の一時的な外出や夏季休暇などがあれば、担当者が業務に戻ってきてからと後回しにし、何とかすることも多いですよね。
でも、体調不良など、急な長期間不在の状態だとしたらどうでしょう?
「担当が不在なのでわかりません」だけでは、切り抜けられないことも出てきます。
特に、今は新型コロナなどの感染症が気になるところ。万が一罹患してしまったとしたら、業務を引き継いだり、電話やメールでやり取りできる状態でなくなったりするかもしれません。(あまり考えたくない事態ですが、万が一を想定することは、リスク管理の観点からも欠かせないことです。)
担当者不在の状態で業務を行うためには、注文書や契約書、伝票類、メールのやり取りや打ち合わせの記録など、「過去の業務の履歴がわかるもの」が重要となってきます。システムで一元管理されていて、どんな取引も契約も、そのシステムを見れば一目瞭然!となっていれば良いのですが、多くの企業では、まだまだ「紙」を中心とした業務や取引が多いのも事実です。
さらに最近では、デジタル化も進み、「紙」と「電子」の2つの形態の文書が存在するので、その管理はますます煩雑になっています。
ではここで、急遽代理で業務を行うことになったA子さんと、本来の担当者で入院中のB夫さんのやり取りを聞いてみましょう。
A子さん、怒っていますね。それはそうです。取引内容もよくわからない、しかもC社のお客様はお怒りモード。それだけでも十分焦る状況なのに、肝心の書類の在り処を、担当者のB夫が正しく把握していないのですから、怒りたくもなりますよね。
同じような経験をされたことがある方も、実は多いのではないでしょうか。
このような時に、必要な文書が、どこにあるのかがすぐにわかるだけでも、業務への対応速度が、断然早くなります。対応速度が早ければ、お怒りだったC社のお客様の気持ちも、少しは変わってくるかもしれません。
当たり前のことではありますが、業務は「組織」で行っているものです。
どの業務にも担当者は存在しますが、担当しているだけであって、それは、「私的な」業務ではないのです。だからこそ、業務に伴って発生する文書は「組織の文書」として、「誰でも、必要なときに、すぐに使う(見つける)ことができる」状態を保つことが、書類・文書管理の「整頓」が持つ大きな意味なのです。
ちなみに、B夫さんの書類・文書管理でNGなポイント、もう一つ見抜けましたか?
それは「個人机のワゴンに、組織の文書を入れていること」です。担当している業務であっても、組織の業務を行う上で発生した文書は、必ず、「共有キャビネット」に収納して、常時共有できる状態にしておきましょう。
個人机のワゴンや、個人ロッカーに収納して良いのは、個人参考資料(異動をするときにも、異動先にも持っていける・または個人の判断で廃棄できる文書)、そして私物(文具や常備薬など)だけです。
組織の文書と個人の資料を混在させてしてしまうことも、書類・文書管理NGポイントの一つなので、この機会に、自分のワゴンやロッカーに、組織の共有文書が入っていないか、ぜひチェックしてみてくださいね。
では、どのように文書を整頓していけば、誰でも、必要なときに、すぐに使える状態になるでしょうか?ここで流れを簡単に見ていきましょう。
文書の整頓、1つめのステップは、文書を業務と紐づけて、グルーピングをする「分類体系」を作ることです。
なんだか、ちょっと難しく感じましたか?でも、大丈夫です。
文書の分類体系をつくることは、皆さんが日常の中で何気なくやっている、ファイルサーバーに「フォルダ」を作ってファイルを管理することと、よく似ているのです。
なぜ分類が必要なのか、ちょっと違う角度から考えていきましょう。
あなたが、とある書店の店員だったとします。あなたの前には、1,000冊の本が積まれています。厚さや大きさも違えば、ジャンルや作者も様々です。そして目の前には、1,000冊の本を並べることのできる、空っぽの本棚もあります。
さて、あなたなら、1,000冊の本を、どのように本棚に並べていきますか?
黙々と、端から順番に並べる方もいるかもしれません。その方法でも、本を収納することはできます。
でも、ここは書店です。たくさんのお客様が、それぞれ違う本を求めて来店します。お客様一人ひとりが、自分の欲しい本を、できるだけ短い時間で見つけることができるようにするには、どうしたら良いでしょうか?
書店や図書館を思い出してみると、歴史、文学、自然科学、語学、児童書など、大きなカテゴリーで売り場や棚が分けられていますよね。それぞれのカテゴリー、例えば「歴史」の中でも、日本史、西洋史、アジア史など細分化されています。さらに、作者別、出版社別など、より詳細な切り口で分類されているところが多いですね。
また、あいうえお順などの規則性をもとに並べられていることが多く、誰にでもわかりやすいように、分類ごとの名称が、通路や棚に表示されていますね。
初めて訪れた書店で、いきなりお目当ての本1冊にたどり着くことは難しくても、「だいたいこの辺りから探せば見つかるだろう」という検討をつけることはできますね(もちろん、最近は検索システムなどの便利なものも大活躍ですが)。
この「探す場所の検討をつける=検索性を向上させる」という目的を果たすために必要なのが「分類」という考え方なのです。
ちなみに、多くの図書館や大きな書店では、「日本十進分類法」という図書分類法に従って分類されているので、どこの図書館でも、比較的同じように探すことができるようになっているのです。
分類の切り口にも色々な考え方がありますが、オフィスでの書類・文書管理という観点から考えると、それぞれの組織が行っている「業務」をもとに、分類していくことをおすすめします。
その時に参考となるのが、職務分掌規程や業務分担表です。ただし、これらは、会社や組織によって、かなり粒度が異なりますので、あくまで参考にしつつ、あとは、実際の業務をよく把握している皆さんで、どうグルーピングしていけば、より文書を管理しやすくなるか、使いやすくなるかということを相談しながら、ぜひ考えてみてください。
そして、分類するときも、書店の分類を思い出して、「大分類」とそれに紐づく「中分類」「小分類」とツリー化していくことで、より使いやすい分類体系を作ることができます。
最終的には、同じ分類の文書が、管理しやすい単位でファイリングされている(ファイルに閉じられている)ことが理想です。 そして、文書の分類体系ができたら、分類ごとに「保有期間」を設定することもお忘れなく。その際には、前回のブログでお話したように「保管」と「保存」の2つのステージに分けて、保有期間を設定してくださいね。
(「保管」と「保存」の違いについてはこちらをご確認ください。)
さて。先ほど、最近は「紙」と「電子」が両方存在するから、より管理が煩雑になっている、というお話をしました。
媒体は異なっても、「文書」という意味では、「紙」も「電子」も、同じように管理することが望ましいと言われています。
業務をもとに考えた「分類体系」であれば、紙でも電子でも、同じように管理することができますね。
ファイルサーバーの中に複数のフォルダを作って、電子ファイルを管理している方も多いと思います。
ところが、このフォルダ体系、紙以上に、個人任せの運用になりがちで、まさに「カオス」な状態となっている組織も多いのです。
クラウドなどで容量が無制限とは言え、カオスな状態のファイルサーバーでは、肝心な時に欲しいファイルが見つからず、業務の効率も落ちてしまいますね。
特に、コロナ禍における在宅勤務では、文書を社外に持ち出すことを不可としている企業も多いので、ファイルサーバーがいかに整理整頓されているかという点が、業務を効率よく行うためにも、重要となってきます。
組織ごとに、フォルダへのアクセス制限などを設定している企業も多いかと思いますが、おすすめの方法としては、アクセス制限だけでなく、第1~3階層くらいまでは、文書の分類体系をもとに、フォルダ体系も固定してしまい、自由にフォルダを作成できないように制限をかけることです。
そして、それ以降の階層を、自由領域(ただし、フォルダを作れるのは6~8階層くらいを限度とする)としていくと、現状よりも、少し整理された状態になるかと思います。
ファイルタイトルの付け方や、バージョン管理の方法など、より詳細なルールを作って、厳しく縛っていくことも可能です。
ただし、紙以上に目に見えにくく、管理しづらい場所なので、どこまで統制を持たせられるかは、難しいところでもあります。
最低限のフォルダ体系を作り、そこからは同じ業務をやる人たちで、コンセンサスの得られる管理を目指していく、という方法から、スタートしてみるのも良いかもしれません。
また、フォルダ体系を新しく構築するときに、「過去分をどうするか」という問題も生まれます。必要に応じて、過去分を移行していきますが、すべてをやろうとすると、非常に難しくなります。
新しく作成するファイルは、新しいフォルダ体系を使う。過去分は、期限を決めて、必要なもののみを移行する、という方法が、成功例としても多いパターンです。
フォルダ体系や電子ファイルの管理でお悩みの方も、ぜひ、ワンビシアーカイブズの書類・文書管理コンサルタントにご相談ください。現状のフォルダの解析や、おすすめのフォルダ体系案等もご提案いたします!
さて、分類体系ができたら、文書の整頓2つ目のステップ、「ファイリング」をしていきましょう。
分類体系をもとに文書を分冊して(分けて)、ファイルなどの用品を使って、ファイリングしていきます。実は、ファイリングは、とても個性が出やすいのです。好みのファイリング用品や、タイトルの付け方も、本当に人それぞれです。
しかし、組織として管理する文書は、しつこいようですが、「誰でも、必要なときに、すぐに使える」ことが重要なので、ファイリング方法についても、できる限り統一していくことが望ましいですね。
ではここでファイリングのポイントについて詳しく解説していきましょう。
◆ファイリングのポイント
この4つのポイントを抑えていくことで、ファイリングの個性も抑えられ、結果的に、他の人がファイリングした文書であっても、同じ基準で探す・使うことができるようになっていくのです。
①のファイリング用品については、多種多様なファイリング用品を、自分や部署の好みで選んでいくと、見た目や使い勝手が異なるだけでなく、少数多品目を購入することで、コストもかさんでしまいます。
完全統一は難しいですが、よく使われるサイズのものは、できる限り統一していくことで、ファイリングもしやすく、コストも抑えることができるので、ぜひ検討してみてくださいね。
そして、②の文書の綴じ方についても、文書を綴じる順序や、紙の向き、A3などの大きな文書の折り方を統一するなど、些細なことですが、同じ文書を共有する人たちが、ストレスなく文書を活用するために、外せないポイントです。
では、ファイリングのポイント③「ファイルタイトル」について、少し詳しくお話していきましょう。
あなたの部署のキャビネットに並んでいるファイルやバインダーの背表紙に、こんなものはありませんか?
◆よくあるファイルタイトルのNG例
上記は、お客様先のキャビネットでもよく見かけるファイルタイトルNG例です。
ファイルタイトルは、文書を探す上での、とても重要なキーワードです。そのためには、誰が見ても、すぐに綴じられている文書が想像できるようなタイトルをつけていきましょう。
◆ファイルタイトルに入れるべき3つのポイント
この3つのポイントを必ず入れることで、誰が見てもわかりやすいファイルタイトルをつけることができます。
あとは、文書を使う皆さんで相談しながら、よりわかりやすいファイルタイトルを目指していきましょう。
◆キャビネットへの並べ方 3つのポイント
書店や図書館などを思い出しながら、棚に分類名を表示したり、使いやすい棚(背伸びしたり、しゃがまなくて良い棚)に、良く使う文書(現年度分やよく活用する文書)を収納して、「誰でも、すぐに、欲しい文書を探せる棚」を目指してみてください。
ここまでできたら、いよいよ文書管理の総仕上げです。
文書の整頓の3つ目のステップ「文書管理台帳」を作成しましょう。文書管理台帳は、これからの文書管理の基盤となるとても大切なものです。
台帳には、①文書名、②ロケーションNo.(キャビネットNo.)、③保有期間などを記載していきましょう。台帳があれば、文書を探すときの検索性も向上し、また、年度が替わって、文書を廃棄・移管する際にも、保有期間に沿って作業をすればよいので、悩むことはありません。文書管理に取り組んだ証として、ぜひ、「文書管理台帳」も作成してみてくださいね。
さて、文書管理台帳を作成して、「やったー!やっと終わった!」と一安心してはいけません。実は、ここは、文書管理のゴール地点ではないのです。ようやく、文書管理のスタート地点に立ったのです。(そんなぁ・・・って思いますよね?)
文書管理で最も大切で、最も難しいことは、「維持・管理」をしていくことです。
せっかく整理・整頓を頑張っても、なんの意識もせずに日々の業務を行っていくうちに、あっというまに、元の文書にあふれたオフィスに戻ってしまいます。
維持させるためには、文書管理を推進する役割を担う部署・人が中心となり、最低でも年1回の文書の廃棄・移管作業や文書管理台帳の更新が必要です。そして、新入社員への文書管理の研修等を繰り返していくことで、定着を図ることができます。
何事も、定着するまで、浸透するまでには時間がかかりますよね。
ワンビシアーカイブズの文書管理コンサルをご利用いただくお客様も、最初は取り組みそのものを面倒と感じる方が多く、社内から反発があることがほとんどです。しかし、地道に整理・整頓を進めて、すっきりした机で仕事をしたり、文書を探す無駄な時間から解放されたりすることを実感していただくうちに、少しずつ意識が変わっていかれる方が多いのも事実です。
「やってよかった」「業務の効率も上がった」「働き方そのものも考えるようになった」そんな前向きなご意見をいただけることが、たくさんあります。
「効果を感じる」それこそが、文書管理を定着させていくための、大切なポイントです。大変な道のりではありますが、せっかくスタート地点に立てたのですから、文書管理の最終ステップ「定着」に向けて、またここから一歩ずつ、頑張っていきましょう。
書類・文書管理の悩みを魔法のように解決してくれる便利なツールは、今の時点ではありません。今後、AIなどの活用で、文書管理の世界にも、大きな変化が訪れるかもしれませんね。
でも、どれだけ技術が進歩しても、「文書管理は整理・整頓」という基本の考え方は、変わりません。
2回にわたってお伝えした文書管理のステップを、最後におさらいしましょう。
◆文書管理の進め方
文書管理は、とても地味なものです。
「面倒くさい」、「やらなくても仕事はできる」そう思われがちです。でも、思い切って手をつけてみると、身の回りがすっきりと片付き、業務の効率も少し上がって、そして、「気持ち」まで少し上向きになる、そんな不思議な力があると思っています。
文書管理の持つ魅力を、ぜひ、このブログを読んでくださったあなたにも体感していただけたら、とても嬉しいです。
自分でトライしてみて、「やっぱり自力では難しい」「社内からの反発にめげそうだ」「もっと自社に合わせた文書管理を極めたい」「テレワークに対応するにはどんな文書管理をすればいいの?」ということがあれば、ぜひ、ワンビシの文書管理コンサルタントにご相談ください。きっと、あなたのお力になれます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。2021年も、あなたにとって、良い1年になりますように。
ご不明な点やご要望などお気軽にご連絡ください。